日本で得た知見を世界へ、5Gでもけん引役を狙う:エリクソン・ジャパン 社長 Mikael Eriksson氏、野崎哲氏(3/4 ページ)
3Gや4G(LTE)など、常に最先端の通信技術を導入してきた日本。2020年の東京五輪で5Gの一部商用化も期待されている。エリクソン・ジャパン社長のMikael Eriksson氏と野崎哲氏は、通信業界における日本市場の重要性を指摘し、日本で得られる知見を世界に生かしていきたいと強調する。
通信機器メーカーにとっての「5G」とは
EETJ エリクソン氏は、2015年8月3日付で「ソフトバンク事業統括本部長」にも着任していますが、これはどのようなポジションなのでしょうか。
マイケル・エリクソン氏 より顧客にフォーカスできる体制を整えるためです。われわれは、日本でビジネスを行っていくためには、顧客により焦点を当てることが重要だと考えているからです*)。
*)ソフトバンクだけでなく、NTTドコモ、KDDIなど向けの事業を扱う専門部署もあるという。
EETJ 2015年7月に、ソフトバンクと共同で、東京で5G通信のトライアルを行うと発表しましたが、それについての詳細を教えてください。
エリクソン氏 現在は(トライアルの中身について)計画している段階であり、詳細についてはまだお話できないのですが、5Gのユースケースなどを精査している段階です。もう少ししたら、詳細を発表できるかと思います。
EETJ エリクソン・ジャパンにおける5Gの位置付けはどうでしょうか。4Gへの投資が済んだばかりの通信事業者にとっては「もう5Gか」という感覚だと思うのですが、通信機器メーカーとして、5Gのトレンドをどのようにとらえていますか。
エリクソン氏 われわれも同じような問題意識を持ちながら、ビジネスに携わってきました。これまでも、強固な通信インフラを提供することに注力してきましたし、どうしたらサービスを改善できるかについても常に考えてきました。
通信技術はこれまでも(2Gから3G、4Gというように)移行してきましたし、5Gというのも、そうした移行や進化の延長線にあるものとみなしています。ただし、5G技術の実装は標準化が終わってからであり、当社の5Gにおけるビジネスモデルについては今後2〜3年のスパンで考える必要があります。
野崎氏 1Gから4G(LTE)までは全て通信方式が抜本的に変わっています。それに対して5Gは、LTEの“その先”、つまりRevolution(革新)ではなくEvolution(進化)だと考えられています。確かに4Gへ投資したばかりではあるのですが、今のLTEネットワークを進化させていく必要は、いずれにしてもあります。そうしたネットワークの進化と、エンドユーザーやサービス側でのニーズが自然に融合したものが、5Gとして発展していくと考えています。現在は、LTEの費用面での展開が終わったところで、これからは質的な向上を目指していく必要があると思います。
EETJ その中で、エリクソン・ジャパンが目指すものとは何でしょうか。また、課題はありますか。
野崎氏 Ericssonは、標準化では世界をけん引する立場にいます。そうした標準化への取り組みを続けつつ、その成果を日本にフィードバックすることで、日本の(5G)市場に貢献できると考えています。もう1つ、非常に大きな役割として果たすべきだと考えているのは、エンド・ツー・エンドでのネットワークの作り込みです。3GPPなどでの無線通信の規格化だけでは、5Gの要件とされる1ms以下の低遅延を達成することは難しく、ネットワーク全体で見ないと、そのようなサービスを提供できません。コアネットワークの仮想化、データセンター側のソリューションなども全て含め、無線ネットワークからクラウドまで、一気通貫でソリューションとして構築する必要があります。
大きな課題としては、周波数帯の統一があるのではないでしょうか。LTEでは、せっかく通信方式が統一されたのに、使う周波数帯は全世界で20以上あります。これからは、周波数帯についてもできるだけ調和を取っていくことが必要だと思います。
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