ドローンの安全な制御通信は量子鍵配送が実現する:NICTなどが開発(1/2 ページ)
情報通信研究機構は2015年9月、プロドローンとサンエストレーディングと共同で、ドローンの飛行制御通信の安全性を強化する技術を開発したと発表した。
情報通信研究機構(以下、NICT)は2015年9月、プロドローンとサンエストレーディングと共同で、ドローンの飛行制御通信の安全性を強化する技術を開発したと発表した。
同技術は、ドローンの無線通信で代表的な方式の1つであるシリアル通信の制御信号を、パケットごとに異なる真性乱数を用いて暗号化が行われるもの*)。この暗号化は、真性乱数と制御信号パケットの単なる足し算で行うため、従来の暗号化で用いられる複雑な関数や膨大な計算を必要としない。そのため、制御通信の乗っ取りや情報漏えいの防御を、小型かつ安価なデバイスで実現するという。
*)真性乱数:規則性も再現性もないランダムな数字の系列。
USBメモリでドローンに真性乱数の供給を行い、真性乱数を共通の暗号鍵としてドローンと地上で安全に共有する。制御通信をパケットごとに異なる真性乱数を用いて暗号化(ワンタイムパッド)を行うことで、制御の乗っ取りや情報漏えいの防御を実現している 出典:NICT
広域でも安全な制御が可能に?
NICTなどは今回、複数の地上局間で安全に飛行制御を引き継ぎながら、ドローンを広域で飛行誘導する実証実験にも成功している。一般に発売されているドローンを無線装置で制御できる距離は、1km程度に制限されている。そのため、ドローンの運用範囲を拡大するためには、地上局間での制御の引き継ぎが必要になる。
今回開発されたシステムは、一度使用した暗号鍵は二度と使わない「ワンタイムパッド暗号化」を用いているため、複数の暗号鍵をドローンに搭載し、対となる暗号鍵をそれぞれの地上局に配送する必要がある。暗号鍵を配送する方法は2種類あるという。
1つ目は、信頼できる宅配サービスなどを利用した人手による配送(第一世代)。2つ目は、量子鍵配送ネットワークによる自動配送(第二世代)である。NICTなどは今回、第一世代、第二世代ともに実証実験に成功したという*)。
*)第二世代の実証実験は、NICT内において安全管理に関する審査を事前に行った上で、NICT敷地内テストフィールドと研究棟屋上に場所を限定し、運用の安全性を確保した状態で実施されている。
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