製品アーキテクチャによる差別化と競争優位性:勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ(8)(1/4 ページ)
今回は製品アーキテクチャの概念的な部分から、差別化や価値をいかに設計に組み込むかについてお伝えしたい。皆さんの企業と顧客の製品がどのタイプのアーキテクチャを持つかが、自社を優位に立たせる観点で重要だ。デジタル家電や自動車業界の例から、電機業界が進むべき方向を考察する。
今回も? 前半は概念的なものが多く、既に製品開発に関わっている皆さんからすれば、「そんなの当たり前だよ」といわれるものも多いかもしれない。しかし、この概念的な部分を割愛してしまうと、その後にお伝えしたい「差別化をいかに設計に組み込むか」「価値を埋め込むか」がぼやけてしまうこともあり、あえて、読むことがしんどい内容を述べることをご了承いただきつつ、お付き合い願いたい。
製品アーキテクチャの基本パターン
製品において、最終製品あるいは、製品内部構成がインテグラル型なのか、モジュラー型なのかにより、製品の特徴、業界における位置付け、とるべき戦略が変わってくる。
最終製品(外)と製品を構成するモジュール(中)が、インテグラル型とモジュラー型による組み合わせが考えられ、4つの基本パターンとなる。これらを模式的に示したものが図1である。
(a)中インテグラル・外インテグラル
最終製品がインテグラル・アーキテクチャ製品であり、最終製品を構成するモジュールもインテグラル型の場合である。
自動車業界の自動車と自動車部品との関係性がこれに該当する。部品メーカーは自動車メーカー向けの特殊部品を作っているが、特殊性ゆえに量産効果が低く収益性が低いのが一般的である。二輪車メーカーも同様である。
(b)中インテグラル・外モジュラー
最終製品がモジュール・アーキテクチャ製品であり、構成するモジュールがインテグラル型の場合である。
自転車業界では、例えば自転車のギア部品や釣りのリールなどのメーカーであるシマノの他、CPUメーカーであるインテル、電子部品メーカーの村田製作所なども同様である。
(c)中モジュラー・外インテグラル
最終製品がインテグラル・アーキテクチャ製品であり、構成するモジュールがモジュール型の場合である。
例えば、計測機器メーカーのキーエンスでは、顧客の現場まで入り込み、コンサルティングなどによる潜在ニーズの発掘と解決をウリにしている。既存の計測機器の業界標準品を組み合わせることで開発し、ソリューションサービスという付加価値を付ける。また、ジェットエンジンを製造・供給しているGE、カスタムLSIメーカーのローム、小型モーターのマブチモーターもこのタイプに該当する。
(d)中モジュラー・外モジュラー
最終製品がモジュール・アーキテクチャ製品であり、構成するモジュールもモジュール型の場合である。
一般に汎用品といわれる製品が該当する。DRAMなどのメモリ、グレード鋼、樹脂などである。
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