自動運転技術、未完のまま市場に出る恐れも:課題山積にもかかわらず(2/3 ページ)
自動運転車への注目度が日に日に高まっている。生命に直接関わる技術なだけに課題は山積だが、市場拡大が急ピッチで進んでいることから、自動運転技術が成熟する前に、自動運転車が市場に投入されてしまうのではないか、と懸念する声もある。
Google Carの動作は“予測不能”
2人のパネリストは、決して事故を起こさないよう設計されたはずの自動運転車「Google Car」の問題点を指摘した。オランダ・トゥウェンテ大学のMarieke Martens氏は、Google Carの反応が人間のドライバーとは異なることから生じる事故のシナリオを示した。同氏は「Google Carは青信号で止まるなど、他のドライバーが予測しないことをするため、後続のクルマに追突される可能性がある」と述べた。
さらに、英国・リーズ大学のNatasha Merat氏は、Google Carが“障害物”を検知すると、それが信号無視をして横断歩道を渡っている歩行者であれ、路肩に乗り上げて駐車している自動車であれ、路上に捨てられている段ボール箱であれ、安全のために停車してそこで待機することを指摘した。「Google Carがしばらくしても動こうとしなければ、後ろのドライバーはイライラしてくるだろう」(同氏)。
Happee氏は、このような問題の背景には、自動運転車が実世界の複雑性に対処する準備ができていないことがあると強調した。米国バージニア大学のHanowski氏は、バージニア州が、自動運転車の走行試験を、テストコースから同州内の公道に移すプロジェクトを立ち上げた。この公道の長さは70マイル(約112km)。そのうち48マイル(約77km)は、インターステートと呼ばれる高速道路である。
だが、Happee氏はこのプロジェクトが長期間の実験の始まりにすぎないことを強調した。将来的にドライバーは、従来とは違う新しい運転技術の試験を受けることが必要になるかもしれない。
リーズ大学のMerat氏は、“人的要因”をさらに研究する必要性を強調した一方、自動車産業がそのような取り組みには資金を投入したがらない、ということを認識すべきだと主張した。同氏は、これまで何度も「完全な自動運転車を実現するために、なぜ、わざわざ“人間”について学ぶ必要がなるのか」と尋ねられたという。
German Aerospace CenterのKelsch氏は、「人的要因に関する研究の歴史は、悲惨な墜落事故で多くの人間が命を落としてきた航空事故に端を発する。われわれは、問題が起きてから対応するのではなく、先を見通して事前に対策を講じることの大切さを航空事故から学ぶべきだ。事故が起こるのを待っているわけにはいかない」と語った。
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