ルネサスがPLCソフトモデムソリューション:世界の電力線通信(PLC)規格に1チップで対応
ルネサス エレクトロニクスは、電力線通信(PLC:Power Line Communication)用LSI「R9A06G037」を開発した。2016年2月よりサンプル出荷を始める。世界各国/地域や電力会社で異なるPLC規格に対し、ソフトウェア変更で対応することが可能である。
ルネサス エレクトロニクスは2015年10月、電力線通信(PLC:Power Line Communication)用LSI「R9A06G037」を開発し、2016年2月よりサンプル出荷を始めると発表した。世界各国/地域や電力会社で異なるPLC規格に対し、ソフトウェア変更で対応することができる。スマートメーターやHEMS(Home Energy Management System)機器などの用途に向ける。
R9A06G037は、PHY層の処理を行うDSP部の動作周波数を高速化するとともに、PLC処理に適した専用命令を追加している。内蔵SRAMの容量も増やした。これにより、通信用ソフトウェアの処理性能を大幅に向上することができた。現行の通信ソフトウェア規格である「G3-PLC」及び「PRIME1.3.6」に対して、PLC特有のノイズ検出、除去及び誤り訂正の機能を強化している。
また、次世代のPRIME規格である「PRIME1.4」の8チャネル同時サポートにも対応することが可能である。この他、内蔵しているLDO(低損失レギュレータ)及びDC-DCコンバータを使い分けることで、電源からのノイズ干渉を低減したり、アナログフロントエンド回路のノイズ耐性を向上したりすることが可能である。
R9A06G037は、ソフトモデムベースのPLCソリューションである。このため、すでに標準化された既存の規格だけでなく、これから標準化される規格へのアップデートにもソフトウェアを変更することで対応可能となる。例えば、メーター間と屋内のNAN(Neighbor Area Network)など、新たに2系統の通信接続が必要になっても、ソフトウェアを変更すれば1チップで対応できるという。R9A06G037のサンプル価格(税別)は700円である。
R9A06G037を搭載したリファレンスボードも用意した。接続したPC画面上から通信に必要なプロトコルスタックや周波数帯域を選択すれば、その通信状況を観測/解析することが容易に行えるという。これによってPLC対応機器の開発期間を短縮することが可能となる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 歩行者に優しい横断歩道、スマホのWi-Fi利用で
ルネサス エレクトロニクスが米国で開催したプライベートイベント「DevCon 2015」では、車載製品からアナログ・パワー製品、「Synergyプラットフォーム」まで、多数の製品デモが行われた。車載向けでは、車車間・路車間通信(V2X)向けの最新SoC「R-Car W2R」を使い、Wi-FiとIEEE 802.11pの通信を組み合わせて、“歩行者に優しい”横断歩道を提案するデモを見せていた。 - ルネサス、豊洲新本社に社員を元気づける食堂
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2015年7月17日、同年7月27日に移転予定の東京都江東区豊洲の新本社に、「社員を元気に!」を目的にした社員食堂を開設すると発表した。 - ルネサス、IoT向けに動作保証されたARMマイコンとソフトを一体で提供へ
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は、IoT(モノのインターネット)機器向けの設計基盤「Renesas Synergyプラットフォーム」を開発した。ユーザーはアプリケーションコードから開発に着手でき、開発負担を軽減できる。同基盤用マイコンとしてARMコアベースのマイコンをラインアップしていく方針。 - 2014年 車載半導体シェア、ルネサスが首位を維持
IHSのリポートによると、2014年の車載半導体サプライヤランキングは、ルネサス エレクトロニクスが首位を維持した。ただし、2015年は、車載分野に注力する大手半導体メーカーのM&Aが続いたことから、ランキングに変動が生じると予測している。