RFIDで乳児の取り違えを防止、日本の病院が導入:お母さんとマッチングさせるとメロディが(2/2 ページ)
サトーヘルスケアは、Cadi ScientificのRFIDタグを活用した赤ちゃんの取り違えを防止するシステムの本格運用を、永寿総合病院(東京都台東区)で開始したと発表した。永寿総合病院で看護部科長を務める小林さつき氏に、同システムを導入した狙いとその効果を聞いた。
今までは厳重にダブルチェック
赤ちゃんの見守り、取り違え防止のためのシステムと聞くと良い印象を覚えるが、果たしてそこまで現場での需要はあるだろうか。永寿総合病院で看護部科長を務める小林さつき氏に、同システムを導入した狙いとその効果を聞いた。
EE Time Japan(EETJ) 今まではどのような対策を行っていたのでしょうか。
小林さつき氏 今までは厳重にダブルチェックを行っていました。ベッドネームと赤ちゃんのタグが2種類つけられ、生まれてすぐにお母さんとお父さんも含めて確認し、その後に助産師同士で確認するといったように入念に確認を行っています。さらに、お母さんがシャワーに行くときや売店に行くときにお預かりするときもダブルチェックを行っているので、確認に多くの労力をかけていました。
あとは、病院の地域性で中国の方の出産が多くて、同じ名字の方が多いんですよね。呼びかけると、3人から一斉に返事が返ってきたりとか。日本人でもいるのですが、同じ名字だと間違えて違う赤ちゃんを連れていくこともあるので。日本での連れ去り事件は10年に1度くらいと頻度は低いので、今回の導入は連れ去り防止という意味での導入ではなく、お母さんや働く私たちのストレスを軽減するための意味合いが大きいです。
EETJ 新しいシステムを導入する上で抵抗はありませんでしたか。
小林氏 システムの操作を覚えなければいけないので、スタッフからは不満の声がありました。危険エリアに入るとアラートが鳴ってしまうので、お母さんに事前の説明もしなければいけない。「誰がやるんですか」とみんな目を吊り上げて怒っていました(笑)。でも、赤ちゃんの受け渡しが楽になりますし、若いメンバーが職場に多いので導入したらすぐに操作方法を覚えてくれましたね。
意外? お父さんたちが大喜び
EETJ 利用者の方々の反応はどうですか。
小林氏 お母さんにも赤ちゃんにも少し大きめなタグが付けられるので、最初は違和感を持つ方もいるかなと思っていました。でも、そういう声はまったくないですね。赤ちゃんの安全のためのシステムと説明すると、皆さんの反応が良いです。
お母さんは、赤ちゃんとマッチングして流れる音を聞いて「大丈夫だ」といったように楽しんでいますよ。生まれたての赤ちゃんはそこまで特徴がないので、「これがあなたの子どもですよ」と言われたら、「そうなのか」となってしまう。そういった意味では、マッチングで優しいメロディーが流れるのはお母さんの安心感につながると思います。
また、驚いたのはお母さんよりもお父さんの方が感激されていることです。病院にずっと居られないお父さんの立場からすると、預けている状況なので、病院側が子どもの安全を守ってくれていると安心感があるようです。おじいちゃんとおばあちゃんでも、おじいちゃんが喜んでいるので、男の人のほうが喜んでいる印象はありますね。
EETJ 逆に課題はありますか。
小林さつき氏 タグを最初に見たときは、そんなに大きいとは思っていませんでした。でも、実際に赤ちゃんにタグを付けるととても大きく見えるので、もう少し薄くしてほしいとは思っています。後は、看護師の立場としてシステムに登録する作業が大変です。でも、今までの労力を考えると、タグ同士を近づけるだけなので楽になりました。
価格はシステム全体で約500万円
同見守りシステムは、シンガポールのCadi Scientificの製品となっている。日本ではサトーヘルスケアが、同社のリストバンドとともに同システムの販売を担っている。永寿総合病院が日本で初めて、同システムを導入した。
価格は、システム全体で約500万円。「セキュリティ扉を導入するためには数千万の費用が掛かるので、コスト面でも安心ではないだろうか」(サトーヘルスケア)と語る。現時点で5つの病院への導入が、商談ベースで進んでいるとしている。
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