6万人のメイドが“合体”!? EtherCATの通信方式:江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(5)(6/8 ページ)
今回は、EtherCATにおける4つの通信方式を解説したいと思います。EtherCATには、マスタ(ご主人様)が、スレーブ(メイドたち)の“身上調査”を行うための「SDO通信」用に3種類、“仕事内容”を送信するための「PDO通信用」に1種類の通信方式があります。膨大な量のフレームが飛び交うEtherCAT通信の世界を、さっそくのぞいてみましょう。
6万5000人のメイドが“合体”?
さて、では最後の通信方式、「(d)論理アドレス通信」を説明します。
これは、全てのEtherCATのPDO用のメモリ空間を、全部纏めて1つの巨大メモリ空間(20Gバイト)として取り扱うという、前代未聞の(少なくとも私は知らない)方式です。
いわば、これは、最大6万5000人のメイドの全員を合体させて、1人の巨大メイドを作るようなものです。
「論理アドレス通信」では、SDOの時のように、[スレーブのアドレス]+[オフセット]の組合せでメモリを指定する必要はなくなり、[メモリ番地]だけで、スレーブに指示を出せるようになります。
しかし、別段、巨大な合体メイドを作らなくても、SDOと同じように[スレーブのアドレス]+[オフセット]でPDOの信号をやりとりしても良さそうなものです。
なぜ、わざわざ、このような方法を採用しているのかというと、ここに、前回お話した、「テレパシー通信(江端命名)」の威力が発揮できるからです。
つまり、マスタ(ご主人様)のメモリの内容を書き換えるだけで、その指示がスレーブ(メイド)に伝わる訳です(逆もまた同じ)。
いちいち、[スレーブのアドレス]+[オフセット]を指定して通信することを考えると、格段に手間がかかりませんし、なによりそのような通信プログラムの実行をばっさり捨て去ることで、EtherCATは、イーサネットの論理的限界速度、最大8000回/秒の通信を実現しているのです。
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