産学官連携で挑むCNT、ついに量産工場が稼働へ:日本発の新材料でイノベーションを(1/2 ページ)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、日本ゼオンがスーパーグロース法を用いたカーボンナノチューブ(CNT)の量産工場(山口県周南市)を稼働させたと発表した。
2015年11月から量産を開始
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2015年11月4日、日本ゼオンがスーパーグロース法(SG法)を用いたカーボンナノチューブ(CNT)の量産工場(山口県周南市)を稼働させたと発表した。
SG法とは、通常のCNT合成方法に加えて、微量(数ppm)の水分を添加する合成方法だ。これにより、10分の成長時間で2.5mmの高さの垂直配向単層カーボンナノチューブ構造体が生成可能になる。従来の合成法より1000倍の成長/触媒効率を維持し、製造コストの大幅な削減を実現したという。
生産規模は非公開としているが、ゼオンナノテクノロジーの社長である荒川公平氏は、「SGCNTはまだ開発途上にあり、数年前の生産性と比較しても数倍高まっている」と語った。今回の量産に先駆け、量産実証プラントを建設した2010年時点で、500×500mmの金属基板上に、1日当たり600gのSGCNTの合成を可能にした。
日本ゼオンは今後、SGCNTの実用化に向けてより低コスト化と量産技術の確立を進めていくとしている。SGCNTを応用した新しい材料や、同社が強みを持つゴムとの複合製品を展開していくという。SGCNTを応用した製品としては、日本ケミコンが試験的ではあるが、小型で低抵抗、高パワー密度が求められるカメラのLEDフラッシュなどのピークカット用途や、SSDのバックアップ用途、エネルギーハーベスト用途などをターゲットにしたキャパシタを試作して事業化を目指している。
2016年度中には、NEDO助成事業によるSGCNTを応用した新製品が製造販売される予定だ。荒川氏は、「今後は、自動車向けのキャパシタに使用できるように研究を進める。自動車向けキャパシタの価格は2万円/kg以下が求められるが、現在は100万円/kgを超すかもしれないので低コスト化を進めていく」と語る。
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