TSMC、中国投資企業に自社株式売却の可能性も:中国に対する投資規制は、緩和の動きか
TSMCは以前から、台湾政府に対し、中国の投資企業に対する規制を緩和するよう求めてきた。ここにきて台湾政府は、規制の見直しを始めるなど、緩和も視野に入れた姿勢を見せている。
TSMC、自社株売却の可能性も
世界最大のファウンドリであるTSMCが、中国の投資企業に自社株式を売却する可能性について、柔軟な姿勢をみせている。
TSMCのチェアマンであるMorris Chang氏は2015年11月7日、同社が開催した年次スポーツイベントにおいて、「売却価格が適正で、かつ株主に利益がもたらされるのであれば、売却の可能性について検討するつもりだ」とコメントしている。
Chang氏がこのようにコメントした背景には、Tsinghua Unigroupをはじめとする中国の投資企業が近年、台湾の半導体メーカーの株式を取得することに興味を持つようになったということがある。Tsinghua Unigroupは2015年10月に、台湾の半導体パッケージメーカーであるPowertechの株式を25%取得した他、台湾の半導体メーカーであるMediaTekの株式取得にも意欲を示しているという。
中国と台湾の政治的な敵対関係は、中国の内戦で1949年に中国国民党が中国共産党に敗れ、台湾に逃れたことから始まった。しかし今回、中国の習近平国家主席と台湾の馬英九総統が2015年11月7日に、1949年以来初めてとなる首脳会談をシンガポールで行ったことから、両国の関係は改善の方向へと向かっている。
半導体産業に注力する中国
中国は、Appleの「iPhone」などをはじめとする携帯型機器の組み立てに必要な半導体の90%以上を、輸入に頼っている。このため中国は、いまだに小規模な自国の半導体産業の発展を後押しすべく、2014年に推進策を打ち出した。
台湾の半導体生産量は、世界全体の約5分の1に達する。台湾がこれまで、自国のエレクトロニクス産業に対する中国の投資を制限してきたのは、雇用や重要な技術が失われるとの懸念があったためだ。
台湾政府は、中国の投資企業に対し、台湾の半導体メーカーに支配的な保有数の株式を買い集めることを禁じている他、MediaTekなど台湾の半導体メーカーへの投資なども認めていない。
25%の株式、最低でも300億米ドル相当
TSMCのChang氏は、「TSMC株式25%の取得金額は、最低でも300億米ドルと高額になるだろう」と述べている。同社は、時価総額が1120億米ドルで、台湾証券取引所とニューヨーク証券取引所に上場している。また、技術産業への投資を行う世界的なファンドマネジャーを数多く抱えている 。
台湾の金融規制監督当局は、Tsinghua UnigroupがMediaTekの株式取得への興味を明示したことを受け、「中国企業の台湾への投資について、規則の見直しを行っているところだ」と述べている。
Chang氏は、「中国からの投資を禁じる理由は何もない」と語っている。
また台湾は、国内の半導体メーカーに対して、中国への投資に関する規則を緩和している。台湾経済部は2015年9月に、「台湾企業が、中国の12インチウエハー工場に対して最大3社まで、単独所有者として投資することを許可する」と発表している。
TSMCは2015年初頭から、規制を緩和するよう台湾政府に求めてきた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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