低電力ワイヤレスマイコン、サブGHz帯を追加:低消費電力技術でIoTを支える
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、「組込み総合技術展Embedded Technology 2015(ET2015)」で、IoT(モノのインターネット)をテーマに、サブ1GHz帯を使ったワイヤレスマイコンや、高いノイズ耐性を実現した静電容量式タッチマイコン、各種センサー製品などを展示した。
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、2015年11月18〜20日のパシフィコ横浜で開催されている「組込み総合技術展Embedded Technology 2015(ET2015)」で、IoT(モノのインターネット)をテーマに、サブ1GHz帯を使ったワイヤレスマイコンや、高いノイズ耐性を実現した静電容量式タッチマイコン、各種センサー製品などを展示した。
サブ1GHz帯ワイヤレスマイコン
日本TIは、電力消費が極めて小さく、複数の無線通信規格に対応可能なマイコンプラットフォーム「SimpleLink」製品を、IoT機器などの用途に提案している。メインCPUコアにARM Cortex-M3を採用し、RF無線ブロックにCortex-M0コアを、センサーコントローラブロックに独自の16ビットマイコンコアをそれぞれ内蔵している。
これまでに、Bluetooth Smart対応製品「CC2640」、6LowPANとZigBee対応製品「CC2630」、複数の2.4GHz無線技術に対応できる「CC2650」などを発表してきた。そして今回、サブ1GHz帯に対応したワイヤレスマイコン「CC1310」を用意した。SimpleLink製品は、主要な回路を3ブロックに分け、必要な回路ブロックのみ動作させる設計とすることで、高い処理性能を備えつつ、ICチップ全体でも極めて小さい電力消費を実現している。
CC1310は、スリープモード状態の消費電流が0.6μAである、また、通信動作中のピーク消費電流も受信時で5.5mA、送信時(+10dBm)で12.9mAと小さい。「従来製品に比べると消費電流は受信時で1/4、送信時で1/3に削減した」(説明員)と話す。その理由として、微細プロセスでの製造に加えて、電力効率の高いDC-DCコンバータをチップ内に集積したことを挙げた。EEMBCのULP(ultra low power)Benchスコアは158を達成している。
CC1310は、サブ1GHz帯(315MHz、433MHz、470MHz、500MHz、868MHz、915MHz及び920MHz)対応により、通信範囲はビル/工場などの建物全体から、市街地などでは最大20kmの距離をカバーすることが可能となる。電池寿命は、コイン型セル電池1個で最大20年の動作が可能だという。同社ブースにはCC1310を搭載した評価キットの他、パートナーであるSMKとテレパワーがそれぞれ開発した通信モジュールを展示した。
高ノイズ耐性の静電容量式タッチマイコン
低消費電力の16ビットFRAMマイコン「MSP430」の製品群として、CapTIvate技術を搭載した静電容量式タッチマイコン「MSP430FR2633」も新たに用意した。ノイズの多い作業環境での誤検出を防ぐための回路をハードウェアで内蔵し、RFイミニティ試験「IEC 61000-4-6」の適合認証を取得するなど、業界最高レベルのノイズ耐性を実現している。伝導ノイズ耐性は最大10Vrmsで、最大4kVピークのESD(静電気放電)やEFT(電気的高速過渡現象)保護性能を達成している。
消費電力も抑えた。待機時モードから高速に機能を立ち上げる「ウェイク・オン・タッチ」機能をハードウェアで実装した。これにより、CPUコアがシャットダウン中であっても、最大4個の電極を利用可能な状態にしておくことができる。この時、スキャンに必要な消費電流は操作ボタン1個当たりわずか0.9μAで済む。さらにFRAMを内蔵することで、収集したデータの高速書き込みが可能となり、メモリバックアップ用の電池も不要となる。マイコン自体はコイン型セル電池1個で最大15年間動作させることも可能だという。
検出精度も高い。厚みのあるプラスチックやガラス、金属などでタッチ検出部を覆ったマルチタッチ製品にも対応する。水滴にも強く、手袋を装着した状態でも使用することが可能である。搭載しているI/O数は16本で、最大64個のボタンに対応することができる。また、4個のセンサーを使い、分解能が1/250cm、長さ30cmのスライダ構成することができる。この他、最大30cmの近接センシングや、4個のセンサーを500μs以内に同時スキャンすることにより、3Dジェスチャの認識を可能としている。
CapTIvate技術は、自己容量方式または相互容量方式を選択して用いることができる。高い感度が必要な用途では自己容量方式を用い、低クロストークで多くのボタンを密集して配置する用途では、相互容量方式を用いることができるなど、製品設計に高い柔軟性を提供する。
産業用途でもIoT化が進む
TIは、IoT社会の実現に不可欠となるセンサー製品とそのソリューションを会場で紹介した。同社が手掛けるのは温度センサーIC、誘導型近接センサーIC、ガス/化学センサー向けアナログフロントエンド(AFE)、光量計測用の近赤外線MEMS DLPチップなどである。また、約50種類のセンシング向けリファレンスデザインを「TI Designsライブラリ」に収録しており、システム設計者を支援する。
展示ブースでは、製品の品質を保つため、生産者から最終消費者に届くまでの温湿度と照度の管理/監視を行うデモを行った。一例としてトラック輸送などを挙げた。コンテナ内に複数個のセンサーモジュール(NFCデータロガー)を設置し、10分ごとにコンテナ内の温度や湿度、照度を測定してデータを保存する。センサーモジュールにはNFC(近距離無線通信)チップが搭載されており、必要に応じてNFC対応のスマートフォンを近づけると、モジュール内に記録されたデータを読み取り、輸送中の環境履歴を確認することができるという。複数のセンサーモジュールを接続するためのネットワークシステムなども紹介した。
「IoT社会は民生用途のイメージが強いが、インダストリ4.0に代表されるよう工業/産業分野でもIoT化は進む。生産性や効率の向上にセンシング技術は不可欠」(説明員)と話す。
関連キーワード
IoT | マイコン | 電力 | 通信 | NFC(Near Field Communication) | 通信モジュール | FRAM | Texas Instruments | Bluetooth | センシング技術(エレクトロニクス) | 静電気
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「世界初」の漏電電流/絶縁劣化監視モジュール
佐鳥電機は、2015年11月18に開幕した「組込み総合技術展 Embedded Technology 2015(ET2015)」で、漏電電流測定/絶縁劣化監視モジュールを展示した。 - ヘテロ構成で性能高めた組み込み機器用SoC、TI
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、高度なリアルタイム処理とマルチメディア処理の機能を1チップに集積した組み込みシステム向けSoC「Sitara」で最上位ファミリとなる「AM57x」製品を発表した。産業用ロボットやマシンビジョン、医療用画像処理などの用途に向ける。 - 複数の無線通信規格に対応した低電力マイコンプラットフォーム
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、電力消費が極めて小さく、複数の無線通信規格に対応できるマイコンプラットフォーム「SimpleLink」を発表した。第1弾として「Bluetooth Smart」や「ZigBee」などの規格に対応する3製品を発売した。IoT(モノのインターネット)機器などの用途に向ける。 - “スマートファクトリ”の実現の先導役に――TIの産業用半導体事業戦略
テキサス・インスツルメンツ(TI)は、産業システム向け半導体事業に対する取り組みを強化する。アナログICと組み込みプロセッシング製品を中心に、高いエネルギー効率や新機能を実現していくための半導体製品と、開発期間の短縮を可能とするリファレンスデザインの提供に力を入れる。