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FreescaleとNXPの合併から学ぶべきこと(前編)売上高1.2兆円の巨大企業の誕生(1/2 ページ)

間もなく、NXP SemiconductorsによるFreescale Semiconductorの買収が完了する。売上高約1.2兆円という超巨大企業の誕生は、半導体業界にどのような影響を与えるのだろうか。そして、今回の買収から、半導体業界は何を学べるのだろうか。

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 NXP Semiconductors(以下、NXP)とFreescale Semiconductor(以下、Freescale)の合併完了が近づいている。売上高100億米ドル(約1.2兆円)の巨大企業が誕生することになる。この巨大企業は、半導体市場にどんな影響を及ぼすのだろうか。

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 NXPとFreescaleの他にも2015年には大規模合併が発表されたが、これらの企業はNXPとFreescaleの合併の行方に注目している。

 米国の市場調査会社であるIC InsightsのシニアアナリストであるRob Lineback氏は、「2015年は、半導体業界にとって歴史的なM&Aの年になった。2015年12月までに発表された買収契約は、半導体業界全体で1020億米ドルを上回っている。だが、大規模買収が必ずしも成功するとは限らない。買収の成否は、2017年までは分からないだろう」と述べている。

 2015年に発表された大規模合併には、Avago TechnologiesによるBroadcomの買収や、IntelのAltera買収がある。これらの買収の成否はまだ判断できないが、アナリストの間では、Freescaleと合併後の新生NXPは順風満帆だと確信する声が多い。

 競合他社は、新生NXPに対して何を脅威に感じているのだろうか。米国の半導体市場調査会社であるSemico Researchの技術部門でチーフを務めるTony Massimini氏は、この問いに対して3つの答えを挙げている。1つはNXPとFreescaleの合併によってもたらされる規模の経済、2つ目は両社が自動車分野で持つ強み、3つ目が両社の製品ラインがほとんど重複しないことである。

人員削減の予定は、なし

NXPのClemmer氏
NXPのClemmer氏

 Massimini氏は、「新生NXPは、製造能力、設計技術、IP(Intellectual Property)、売上高、マーケティング能力が特に強化される」と述べている。

 この予測はもちろん、NXPのCEO(最高経営責任者)を務めるRick Clemmer氏が新生NXPの運営をFreescaleとの契約通りに進めるという前提で述べられている。Clemmer氏は、「工場や設計チームの人員削減を行う予定はない」と表明している。

 NXPとFreescaleは幅広い製品ポートフォリオを持ちながら重複する製品が少ないことも、Massimini氏の楽観的な見解を後押ししている。

 Massimini氏は、「両社のポートフォリオを組み合わせることで、特に車載/デジタルネットワークが強化される。NXPは車載機能向けデバイスに強いが、車載向けMCUは提供していない。一方、Freescaleは『PowerPC』『ColdFire』、ARMという定評のある3つのアーキテクチャを適用した車載MCUに注力している。両社が共に提供しているのは、セキュリティIPだ」と説明している。

 セキュリティは、NXPとFreescaleの合併会社のもう1つの強みになると期待される。Massimini氏は、「NXPはスマートカード市場で確固たる地位を築いている。さらに、クラウドアプリケーション向けサイバーセキュリティ技術も持っている。Freescaleは、ハイエンドMPUとデジタルネットワーク向けセキュリティに強い」と述べている。

 さらに、IoT(モノのインターネット)分野での強みも、アナリストが今回の合併に肯定的な理由だ。Freescaleは、MCUとともにアナログICとセンサー群を有している。Massimini氏は、「両社ともIoT向けの製品ラインアップを整えている」と話す。

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