FreescaleとNXPの合併から学ぶべきこと(前編):売上高1.2兆円の巨大企業の誕生(2/2 ページ)
間もなく、NXP SemiconductorsによるFreescale Semiconductorの買収が完了する。売上高約1.2兆円という超巨大企業の誕生は、半導体業界にどのような影響を与えるのだろうか。そして、今回の買収から、半導体業界は何を学べるのだろうか。
光デバイスが抜けている
IC InsightsのLineback氏は、「NXPは、今回Freescaleを買収したことによって、センサー市場における主要なプレーヤー企業となるだろう」と述べる。
合併以前のNXPは、MEMSセンサーを保有しておらず、磁場センサーと温度センサーを供給するのみだった。
しかしFreescaleから、MEMS圧力センサーとモーションセンサー(加速度センサー、ジャイロセンサー)の他、近接検知向けの電界センシングデバイスなどがもたらされることになる。
Lineback氏は、「NXPとFreescaleの合併買収により、半導体センサー市場では、さまざまな分野において競争が激化していくとみられる。加速度センサーとジャイロセンサーの分野はかつて、MEMSベースのカテゴリーの中でも著しい成長を遂げていたが、現在では価格が下落したために、売上高が減少している。センサー市場のメーカー各社は、近いうちにNXPとの激しい競争に直面することになると覚悟すべきだろう」と説明する。
同氏は、「Freescaleとの合併後のNXPに欠けている点としては、オプトエレクトロニクスが挙げられる。オプトエレクトロニクスは、ICチップをはじめとする他の半導体分野よりも強力かつ確実な成長を維持しているといえる。NXPは今後、自動車市場やIoT市場に向けた光センサーやオプトエレクトロニクス製品分野への対応に狙いを定め、別の買収を行う可能性がある」と述べている。
頂点からのスタート
2つの異なる企業が追求してきた製品ロードマップや技術開発プログラムを整理し、一元化するためには、さまざまな規律や優れた計画性、系統的アプローチなどが求められる。
しかしLineback氏は、「今回のような大規模合併における最大の課題は、企業文化の融合、もしくは新たな企業文化の創出である」と指摘する。
同氏は、「興味深いことに、かつてNXPとFreescaleがそれぞれ、大規模な垂直統合型半導体メーカーであるPhilips SemiconductorsとMotorolaの一事業部門だった当時まで、数十年間以上さかのぼって見てみると、両社の企業文化は非常によく似通っていたことが分かる。また、NXPとFreescaleが、半導体専業メーカーとしてスピンオフした後も、両社の文化には多くの共通点がみられる」と述べている。
同氏は、「NXPとFreescaleはいずれも、やや保守的で、エンジニアリングを重視する企業だ。ただ単に、欧州の半導体メーカーと、かつて非常に優れた業績を上げていたシリコンバレーの新興企業とが合併しただけとはいえない」と述べる。
Massimini氏は、今回の買収が最初から成功すると確信しているという。
「合併の成功の鍵は、経営陣が、両社の製品ポートフォリオだけでなく、2つの組織全体をいかにうまく融合することができるかどうかにある。販売やマーケティング、製品開発などをうまく調和させることが不可欠だ。IoTやデジタルネットワーキング、自動車分野などでのそれぞれの取り組みにおいて、共通戦略を確立し、目標の達成を追求していく必要がある。最初にこうした戦略を始動させ、組織の上から下まで全体に明示すべきだといえる」(同氏)。
(後編へ続く)
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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