「ムーアの法則を進める必要がある」――ARM:「IEDM 2015」基調講演で(2/2 ページ)
2015年12月7〜9日に開催された「IEDM 2015」の基調講演で、ARMのシニアリサーチャーであるGreg Yeric氏は、「半導体チップの微細化は一段と困難になっているが、それでもムーアの法則を続ける必要がある」と語った。
リソグラフィ技術の展望は?
また同氏は、次のように付け加えた。「より微細なパターンを描くためには、リソグラフィ装置を用いた複数の手法を採用しなければならないため、コストが増大する。しかし、7nmプロセス向けに開発予定のステッパーは、28nmプロセス用のものと比べて50%の高速化を実現することができるという。さらに、マスク業界は引き続き、書き込み時間にかかるコストを主に削減していくとともに、マルチ電子ビーム描画装置のコスト規模を大幅に削減するための取り組みを大きく前進させていくと宣言している」。
Yeric氏は、EUV(極端紫外線)リソグラフィ装置について懐疑的な見方をしているようだ。EUV装置はこれまで長期にわたり、より微細なパターンの描画を実現できる手段として最も期待されてきたが、仮にそうだとしても、あまりに課題が多すぎて、7nmプロセスに適用することができない可能性があるためだという。
同氏は、「EUVでは、7nmプロセス以降、マルチパターニングが必要になる。このため、5nmプロセス以降、リソグラフィ装置によってどれくらいのコスト削減が可能になるのかは不明だ。今のところ、EUVの代替としては、DSA(Directed Self-Assembly:誘導自己組織化)が最も有力とされている。しかしDSAにも、誘導パターンに限りがあるという独特の制約があるため、形成できる最終パターンが制限される可能性がある」と説明する。
さまざまな課題の中でも特に重要なのが、性能を上回る電力を提供可能なトランジスタを搭載したチップを実現することは可能なのかという点だ。
「ダークシリコン(シリコンダイの中で電源をオフにするエリア)の問題を解決するには、寄生容量やオンチップワイヤの微細化などに対応するために、飛躍的な進歩を遂げる必要がある。例えば、多層グラフェンを用いたインターコネクトや、カーボンナノチューブバイアスなどの実現が挙げられる。16/14nmプロセス以降は、電力と性能の半分がワイヤ上で失われる可能性があるが、これについてはほんの数世代前まで、大した問題ではないとされていた」(同氏)。
NTCに注目集まる
Yeric氏は、将来性のある分野を幾つか挙げている。例えば、現在進められている、電力効率の最適化に向けた専用のコンピューティングブロックもその1つだ。
同氏は、「最終的に、GPUや画像認識用プロセッサなどは、ほぼコンピューティングに近い状態にまで進化するかもしれない。また、分類機能や整合機能など、インメモリの共通機能によるサポートを受けることによって、さらなる高効率化を実現し、完全なPIM(Processor In Memory)へと進化していく可能性もある」と述べる。
「さらに、ディープニューラルネットワークを利用すれば、ブロックを作成できる可能性もある。しかし、このようにプロセッシングとメモリを融合するには、論理/メモリチップに関する既存のさまざまな設計/製造手法を変化させる必要がある」(Yeric氏)。
現在成長が見込まれているIoT用超低消費電力デバイスに向けた、NTC(Near-Threshold Computing)の研究に期待が寄せられているようだ。IoTシステムは、消費電力量を最小化するために、ノーマリーオフ型のコンピューティングを採用する一方で、ユースケースでは常時オンのセンシングを必要とすることから、NTCには二重のメリットがあることが実証されているためだ。Yeric氏は、NTCの技術は、RFアナログICでの採用が適しているとみている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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