“6-in-1”オシロに手応え、RFとパワーを狙う:テクトロニクス Chris Witt氏(2/3 ページ)
テクトロニクスのオシロスコープ群で好評を得ているのが、オシロスコープに最大5つの機能を追加できる“6-in-1”、「MDO3000/4000Cシリーズ」だ。同社は、これを武器の1つとして、伸びしろのあるRFとパワー、そして自動車分野を狙う。
SiC/GaNパワー半導体も鍵に
RFの次には、パワー測定が挙げられる。特にモバイル機器のパワー測定では、微小な電流をいかに正確に測れるかが重要になる。モバイル機器ではバッテリー寿命を延ばすという課題が常にあり、そのためにはバッテリーの電流を小さくしていくことが必要になるからだ。
パワー測定の分野では、SiCやGaNなどの次世代パワー半導体を用いた電源の測定が、より重要になっている。SiC/GaNパワー半導体は、高速スイッチング、高耐圧、高耐熱といった特長を持っている。そのため、500MHzや1GHzといった周波数帯域のオシロスコープが必要になる電源設計者も増えてきた。このような高い周波数帯域のオシロスコープを使う場合、プローブが重要になる。従来、オシロスコープに標準で付属されている受動プローブの周波数帯域は500MHzが限界だった。だが、テクトロニクスのオシロスコープには、1GHzの受動プローブが搭載されている。次世代パワー半導体を扱うユーザーにも十分に対応できる。
この他、LED照明や太陽光発電、自動車といった分野にも注力している。特に自動車業界の動向には注目している。自動車は従来、安全面から、ある程度こなれた技術を採用してきたが、最近はコスト効率や信頼性、耐環境性などの向上を実現すべく、最先端技術を用いるようになってきている。ADAS(先端運転支援システム)やコネクテッドカーなどの新しい技術の登場により、クルマに搭載される通信ノードは飛躍的に増えると予想されているので、テクトロニクスとしても車載向け通信の課題解決に貢献できるような測定ソリューションを提供したい。
“6-in-1”オシロに手応え
EETJ 2015年の注目製品は何でしょうか。
Witt氏 2015年12月9日に発表したばかりのミックスド・ドメイン・オシロスコープ「MDO4000Cシリーズ*)」だ。最大の特長は、オシロスコープをベースに、スペクトラム・アナライザ、ロジックアナライザ、プロトコルアナライザ、ファンクションジェネレータなどを追加できる点にある。最大6つの計測器を1台に搭載できる、“6-in-1”のオシロスコープだ。6-in-1のオシロスコープとして、2014年にMDO3000シリーズを発表したが、これがユーザーに大変好評だった。既存の「MDO4000シリーズ」は、スペクトラム・アナライザなどを追加することができない機種もあったので、ユーザーの利便性を高めるべく、MDO3000シリーズの“6-in-1”という特長を、MDO4000シリーズのプラットフォームにも移行した形になる。
*)関連記事:6つの計測器の機能を1台に搭載するオシロスコープ
RF測定のところで話したように、まずはオシロスコープだけのMDO4000Cシリーズを購入しておき、RF測定が必要になったらスペクトラム・アナライザの機能を追加すればよい。さらに、ユーザーにとって重要なのが、350MHzから500MHz、500MHzから1GHzといったように、周波数帯域を拡張できることだ。どの分野においても、より高い周波数帯域が必要になっている。現時点での予算に合わせて(標準タイプの)MDO4000Cシリーズを購入し、2年後や3年後、1GHzの周波数帯域が必要になったら、その都度アップグレードしていける仕組みになっている。
EETJ 機能の追加はどのように行うのですか。
Witt氏 追加する機能によるが、ロジックアナライザやファンクションジェネレータ、プロトコルアナライザは、本体にキーを挿入すればよいのでユーザーが行える。スペクトラム・アナライザを追加したり、帯域幅を拡張したりする場合は、ハードウェアの追加やキャリブレーションが必要になるので、当社で行っている。オシロスコープに、スペクトラム・アナライザをハードウェアとして追加できるのはテクトロニクスの製品だけだ。
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