“6-in-1”オシロに手応え、RFとパワーを狙う:テクトロニクス Chris Witt氏(3/3 ページ)
テクトロニクスのオシロスコープ群で好評を得ているのが、オシロスコープに最大5つの機能を追加できる“6-in-1”、「MDO3000/4000Cシリーズ」だ。同社は、これを武器の1つとして、伸びしろのあるRFとパワー、そして自動車分野を狙う。
EETJ 6-in-1のオシロスコープを販売することで、製品ラインアップの“食い合い”が起こっているのでは?
Witt氏 恐らく、一部では起こっていると思う。例えばロジックアナライザの販売台数が下降気味になっているが、その要因の1つには、明らかにミックスド・シグナル・オシロスコープ(MSO)*)の存在がある。MSOの方が、ユーザーのニーズに合っていたということだ。だが最も重要なのは、このように顧客のニーズに応え、彼らが測定において抱えている問題を解決することだと思っている。また、6-in-1オシロスコープの機能の1つとしてのロジックアナライザと、スタンドアロンのロジックアナライザは(性能面などで)別物なので、単純に“食い合っている”とはいえない場合も多い。
*)アナログ信号、デジタル信号、RF信号を測定できる、テクトロニクスのオシロスコープシリーズの1つ。
ただ、顧客には、やはりオシロスコープを使い慣れている人が多く、そうしたユーザーにとっては、オシロスコープに他の測定機能が搭載されていると、ボタンなどが統一されているので使い勝手がよいと感じる場合が多いようだ。例えばRF測定が必要になった時に、“オシロスコープの操作でスペクトラム・アナライザを使える”ことになるので、ユーザーにとっては大きなメリットになると考えている。
オシロ市場の今後は
EETJ オシロスコープ市場の今後の見通しについては、いかがですか。
Witt氏 全体的に見ると成長率はあまり高くない。1桁台の前半だとみている。ただ、セグメント別で考えれば、先ほど述べたようにRF、パワー、自動車向けは急速に伸びている。その他の幅広い分野については、過去5年間とあまり変わらないだろう。
EETJ そうした状況の中で、シェアを伸ばすための戦略を聞かせてください。
Witt氏 まずはRF、パワー、自動車の3つのセグメントにおいて、顧客のニーズをしっかりとくみ取ることだ。
また、今後5年間は、MDO4000Cシリーズのようなオシロスコープのプラットフォーム、プローブ、ソフトウェアの開発に最も力を入れていく。オシロスコープの性能だけを上げても、高性能なプローブがなければ正確な測定はできない。プローブからオシロスコープまで、強力な製品ラインアップをそろえていく。ソフトウェアでは、特にRF、パワー、自動車向けのものに、投資を増やす予定だ。
実は、テクトロニクスはプローブに強みを持っているのだが、それを顧客に伝え切れていないと感じている。
EETJ オシロスコープのユーザーは、オシロスコープ本体に投資をしても、プローブにはあまり投資しないという話を聞いたことがあります。
Witt氏 2016年は、プローブ製品の紹介にも力を入れるつもりだ。われわれは、周波数帯域が1GHzの受動プローブを提供しているが、それを知らない顧客もいる。他社品は最高でも500MHzなので、当社の1GHzプローブは、高速な信号を測定する際に大きなメリットを提供できる。さらに、テクトロニクスは静電容量が低いプローブにも強い。従来は静電容量が30pFほどだったが、今では9pFのプローブもある。これは低電圧、低電流の測定が必要な時に威力を発揮する。
EETJ オシロスコープの性能を向上させるには、何が最も重要になりますか。
Witt氏 プローブからオシロスコープの出力まで、つまり信号の入り口から出口まで、全ての信号経路を正確に理解して、ノイズなど“弱点”となる要素をつぶしていくことだ。アンプ、ASIC、A/Dコンバータなど、信号経路に沿った全てのコンポーネントが、性能を向上させるための対象となる。現在、当社の設計チームは新しいASICを開発している。
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