高性能A/D変換器の開発成果と本音トークのパネル討論会:福田昭のデバイス通信 ISSCC 2016プレビュー(5)(1/3 ページ)
セッション15では、Analog Devices(ADI)が発表する、入力帯域幅が465MHzと極めて広いΔ-Σ方式のA/D変換器などに注目したい。2016年2月1日と2日の夜に行われる、パネル討論会も興味深い。「無線回路を20nm未満に微細化する必要はあるのか」や、「2000年代の回路設計で最も素晴らしい瞬間」などが討論のテーマだ。パネリストたちの熱い本音トークが聞けることを期待したい。
入力帯域幅が465MHzの広帯域通信用A/D変換器
前回に続き、ISSCC 2016の技術講演セッションから、2016年2月2日(火曜日)午後に発表予定の講演論文のハイライトをお届けしよう。
この時間帯は、セッション12からセッション16までの5本のセッションが同時並行に進行する。メインテーマは、セッション12が「アナログ」、セッション13が「ワイヤレス通信」、セッション14が「デジタルアーキテクチャ」、セッション15が「データ・コンバータ」、セッション16が「テクノロジディレクション」である。前回はセッション12からセッション14までの注目講演をご報告した。今回は、セッション15以降の注目講演と、月曜と火曜の夜に開催されるパネル討論会をご紹介する。
セッション15のサブテーマは「オーバーサンプリング・データコンバータ」である。ここでは、広帯域無線通信に向けたCMOSのデルタシグマ(Δ-Σ)方式アナログデジタル(A/D)変換器の開発成果に注目したい。
Analog Devicesは、入力帯域幅が465MHzと極めて広い、Δ-Σ方式のA/D変換器を発表する(講演番号15.5)。連続時間1-2MASH型で、8GHzと極めて高いクロック周波数で動く。ダイナミックレンジは69dB、消費電力は930mWである。製造技術は28nmのCMOS。
MediaTekは、入力帯域幅が160MHzと広いΔ-Σ方式のA/D変換器を発表する(講演番号15.6)。4次の連続時間型である。ダイナミックレンジは72dBと高く、消費電力は40mWと低い。符号間干渉(ISI)を抑制することで高いダイナミックレンジと電力効率を得ている。製造技術は16nmのFinFET CMOSである。
セッション15(オーバーサンプリング・データコンバータ)で発表予定の講演一覧。アーキテクチャと製造技術をまとめたもの。2015年11月16日に東京で開催されたISSCC記者会見の資料から(クリックで拡大)
セッション16のサブテーマは「新規技術による回路とシステムのイノベーション」である。ここではKU Leuvenとimec、ICsenseの共同研究グループが、大面積X線イメージング向けの折り曲げ可能な画素アレイを発表する(講演番号16.5)。フルHDの撮影に対応しており、255画素/インチの解像度を有する。トランジスタの材料はアモルファスIGZOである。
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