ルネサス横田氏が語る、Synergy/R-INの未来:成果が出るのは2017年以降?(2/3 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは2015年12月、プライベート展「Renesas DevCon Japan 2015」を開催した。同イベント会場で、売上高の約60%を占める汎用事業を統括する執行役員常務の横田善和氏に、これからの成長戦略などについてインタビューを行った。
2020年までに累計800億円の売り上げを
EETJ Synergy関連ビジネスとしての収益性はどの程度、見込んでいますか。
横田氏 やはり、1件当たりの数量が多いのは残念ながら既存のビジネスである。Synergyは、1件当たりのビジネス規模はまだ大きくないのが現状だが、バリエーションがたくさんある強みがあるので、経済合理性を見いだせると思っている。ソフトウェアもパッケージにして提供しているため、既存のマイコンよりも値段的には高い。しかし、開発費などのTCO(Total Cost of Ownership)を考えると、ルネサスが動作保証したソフトウェアを使っていただいた方が安くできるのではないだろうか。
EETJ ソフトウェアの動作までを保証できる理由はどこにあるのでしょうか?
横田氏 Synergyで提供されるソフトウェアパッケージには、「SSP(Synergy Software Package)」、「QSA(Qualified Software Add-On)、「VSA(Verified Software Add-On )」の3つがある。SSPはRTOSや通信スタック、ミドルウェアなどで構成され、ルネサスが1からインタフェースを定義して動作保証したソフトウェアパッケージ。QSAは、当社が提供するアドオンソフトウェア(動作保証)である。
VSAは、ルネサスのパートナー企業から提供されるアドオンソフトウェアとなっている。ルネサスとパートナーの切り口/仕様を厳格に決めて、当社が認定したパートナー企業のVSAを組み込むことで動作保証を行うことを可能にしている。トータルで動作保証を行うモデルは、パートナーとの強い連携によって実現できたと考えている。
EETJ Synergyの収益化に関する計画などはありますか?
横田氏 2015年12月の販売開始から5年以内に累計800億円の売り上げが目標だ。
自律するM2Mへ
EETJ R-INエンジンと人工知能を組み合わせたシステムについてお伺いしたいと思います。組み込みシステムのエッジデバイス側でデータの処理を行うといった形は、最近になって聞くようになったイメージがあります*)。
*)関連記事:インダストリー4.0の課題は人工知能で解決
横田氏 ルネサスが最初に取り組んだのではないだろうか。今まではセンサーを搭載した機器から得られたビッグデータは、全てクラウド上に送られて処理されてた。しかし、それでは“ルネサスらしさ”が出せないし、データの量が多すぎてクラウドの応答性に多くの時間を要するといった課題があった。
そこで、ルネサスは2014年から「自律するM2M」という言葉を掲げて、エッジデバイス側でデータの処理を行うことで、クラウドに必要なデータだけを送るシステムの開発に取り組み始めた。それが、R-INエンジンと人工知能を組み合わせたシステムになる。
EETJ クラウド上に全てデータを送るのではなく、エッジデバイス側でデータの処理を行うといったニーズはもともとあったのでしょうか?
横田氏 リアルタイム性を必要としている分野にとっては、多くのニーズがあるだろう。1時間に1回データを収集するといったような形では、ルネサスの取り組みは必要ないかもしれない。しかし、機械の動作のデータ収集というようなリアルタイム性が求められる分野では、不具合の検出や新しい製品の開発において効果的だと思っている。
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