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高性能、高精度、低消費電力を兼ね備える信号処理技術をベースに“想像を超える可能性”を提供アナログ・デバイセズ 代表取締役社長 馬渡修氏

アナログ・デバイセズは、昨年創業50周年を迎え、新たな企業スローガンとして「AHEAD OF WHAT'S POSSIBLE 〜想像を超える可能性を〜」を掲げ、コンバータ/アンプといった信号処理用デバイスを中心としたソリューションで、革新的な価値創出を目指す。「国内では、より多くのユーザーとの接点強化にも取り組み、2016年度も売り上げ規模の拡大を狙う」という同社日本法人社長の馬渡修氏に、2016年度の事業戦略などについて聞いた。

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売上高20%成長、過去最高業績を達成

――10月末締めの2015年度の業績は、売上高34億米ドルと前年比20%増を記録されました。

馬渡修氏 9四半期連続で前年同期比を上回るなど好調を維持し、全社業績として過去最高の売上高、利益を計上することができた。

 注力市場の1つである通信機器市場は、世界的に設備投資が抑制され、前年並みで推移した一方で、ポータブル機器や計測機器向けが大幅に伸びたことで、好調な業績を支えた。

――日本国内での業績はいかがでしたか。

馬渡氏 計測機器向けに加え、自動車向けが引き続き堅調だった。ただ、円安が進んだこともあり、米ドルベースでの売上高は2桁成長には届かなかったが、2年連続の売り上げ成長を達成することができた。

“コアマーケット”への対応強化

――2015年は、中小規模のメーカーに対するサポート強化を重点施策の1つとして掲げられていました。

馬渡氏 国内産業界はベンチャー企業や、規模は中小ながらそれぞれの得意分野でイノベーションに取り組んでいる顧客層の牽引力がますます増大していく。こうした企業やたくさんの中小企業が存在するマーケットを「コアマーケット」と定義し、また、その中でも、優れた技術を持ち、世界市場の特定分野で高いシェアを獲得している顧客層を「グローバル・ニッチ」と位置付け、継続してこの分野の顧客開拓、サポート強化を進めてきた。

 2015年は、これまでマーケティング機能だけだったコアマーケット専属部門に、営業機能を追加し、専任のテクニカルサポートマネージャー(TSM)も配置した。こうした組織強化の成果もあり、より広いエリアで密着型の販売/サポート活動を展開できるようになった。コアマーケットにおける2015年の提案プロジェクト数は、前年比10%以上増え、2016〜2017年に向けて、コアマーケットでの一層のシェア拡大が望める状況だ。

――2016年度の見通しをお聞かせください。

馬渡氏 2015年後半から、中国市場向けの産業機器を中心に、需要は減速傾向にある。当社のビジネスは、企業の設備投資動向の影響を受けやすく、その設備投資もどちらかと言えば足元は抑制傾向にあるようだ。一時的な調整局面であればよいが、決して先行きは楽観視できない状況だ。

 ただそうした中でも、少なくともGDPの2倍を上回る成長を持続することを目標に据え、日本法人としては、3年連続の売り上げ成長を達成したいと考えている。

3年連続での売り上げ成長に向けて

――2016年度のビジネス成長に向け、期待されているアプリケーションは、どの辺りになりますか。

馬渡氏 注力するアプリケーションセグメントは、これまでと変わらない。「自動車」「ライフスタイル(民生機器)」「医療/ヘルスケア」「産業機器」「通信インフラ」の5つだ。

 自動車については、パワートレイン系、ADAS(先進運転支援システム)系がターゲット。医療/ヘルスケアについては、多少の時間を要するものの、さまざまな生体情報をモニタリングする需要は着実に伸びており、きっちりとビジネスにつなげていきたい。

 ライフスタイルについてはご存じの通り、近年、国内市場は縮小傾向が続いたが、このところは底打ちした状況で、上向き傾向にある。高性能、高精度のアナログ半導体が求められるデジタル一眼レフカメラなど、ハイエンド民生機器向けビジネスは継続的に強化していく。

――産業機器、通信機器についてはいかがですか。

馬渡氏 産業機器分野では、アナログ、およびデジタル変換技術とさまざまなインターフェース技術を必要とするイノベーティブな製品がある。これは、当社の強みである“高性能、高精度、低消費電力”に加え、アナログ/デジタル混在回路技術を生かした成果である。代表的な例としては、8本のI/Ox ピン(I/O0〜I/O7)を備えた「AD5592R」があり、これらのピンはD/Aコンバータ出力、A/Dコンバータ入力、デジタル入出力として個別に設定することができる。

 通信インフラについては、5G(第5世代移動通信)の立ち上がり時期次第の部分が多く、2016年については苦戦も予想される。ただ、2014年7月にHittite Microwave社(ヒッタイト マイクロウェーブ/以下、Hittite)を買収したことにより、従来のDCから30GHz程度だったRF製品のカバー領域が、100GHz以上の超高周波領域にまで、広がった。超高周波帯の使用が見込まれる5G向けの製品はそろっており、準備は整っている。

DCから110GHz超までRF領域もフルカバー

――Hittite買収の効果はいかがですか。

馬渡氏 統合作業は完了し、拡販を進めている状況で、成果も出始めている。例えば、RFテスター向けでは、これまでのアナログ・デバイセズがカバーしていたBOMを「1」とするならば、Hittite買収後は「2」ないし「3」程度まで拡大している。提案可能な幅が広がったことは、顧客にも歓迎されており、さらに買収効果を発揮できるのではと思う。

――今後の製品開発戦略について教えてください。


創業50周年を機に、新たなコーポレートスローガン「AHEAD OF WHAT'S POSSIBLE 〜想像を超える可能性を〜」を制定

馬渡氏 製品開発に関しても、“高性能、高精度、低消費電力”を兼ね備えたコンバータ、アンプなどシグナルチェーン向け製品を強化するという従来方針に変わりはない。

 高性能、高精度、低消費電力な標準品/コアデバイスを開発し、それらコアデバイスをベースに、アプリケーション市場や顧客に特化したASSPなどのソリューションを提供するという流れも変わらない。

 アナログ・デバイセズは2015年に、創業50周年を迎えた。この50周年を機に、新しいコーポレートスローガンとして『AHEAD OF WHAT'S POSSIBLE』を掲げた。『想像を超える可能性を』という意味のスローガンであり、顧客と未来を共有しながらイノベーションを加速し、ブレークスルーを生む新たなソリューションを生みだし続けていくことをあらためて打ち出している。

――2016年に期待されている新製品はありますか。

馬渡氏 数多くあるが、その中でもゼロドリフト高精度オペアンプの新シリーズ「ADA4522」は発表から間もないが、多くの反響がある製品の1つだ。


ゼロドリフト高精度オペアンプの新シリーズ「ADA4522」

 競合と比べても、かなり低いオフセット/ドリフトを実現しながら、EMI(電磁干渉)フィルタを内蔵し、キャリブレーション回路も外付け不要という使いやすさも兼ね備えている。電源やモーター制御での電流検知、計測機器などのアプリケーションでオペアンプの定番となっていくだろう。

 ADA4522のような優れたコアデバイスをベースに、市場要求に応えた高集積型のデバイスでは、「AD7124」シリーズも面白い。このデバイスは、機能安全を達成するための仕組み、診断できる機能を盛り込んだデバイスで、24ビット分解能のシグマデルタA/Dコンバータコアをベースに、シグナルチェーン回路を集積した1チップ型のアナログフロントエンドだ。業界標準の信号やセンサー入力を直接接続できる利便性を持ち、消費電力も抑えられる。高精度のセンシングが要求されるアプリケーションが広がるなかで、手軽に少スペースで高性能、高精度、低消費電力のアナログフロントエンドを実現できるソリューションであり、好評なデバイスの1つだ。

高いシェアを一層伸ばす

――2016年度、売り上げ成長のカギを握る要素は、どの辺りにありますか。

馬渡氏 やはり、コアマーケットでのビジネス規模をいかに広げていくかが重要になるだろう。

 当社の主力製品であるコンバータ、高性能アンプの国内シェアは、全世界で獲得している割合よりも高い。コンバータを例にとれば、およそ50%の世界シェアに対し、国内では60%程度に達している。そういう意味では、シェアを伸ばすことは難しくなっているのだが、コアマーケットに限っては、まだまだアプローチしきれていないユーザーは多くいるはずであり、ビジネス拡大のカギになると考えている。

――コアマーケットでのビジネス拡大策は、ありますか。

馬渡氏 お話した通り、2015年にコアマーケット専門の営業チームを構成し、組織としては整った状況にある。今後は、よりユーザーにとって、当社の製品や情報を手に入れやすく、使いやすい状況を提供することが必要だと考え、デジタルマーケティングの強化を図っていくことになるだろう。

 また、数年前から強化し続けてきた「Circuits from the Lab実用回路集」の認知拡大も推し進めていく。

 Circuits from the Lab実用回路集とは、その名の通り、“実用回路”を提供するというコンセプトのソリューションで、検証/評価済みのすぐに使える回路を提供している。回路に必要なデバイスを全て実装したボードのみならず、回路図や部品表、ソフトウェア、開発ツール、プリント基板製造用データに至るまでの全てを提供するものだ。

 既に、257種類の実用回路を開発、公開している。およそ半分の回路は、コンバータ/アンプなどのデバイスのサンプル回路という意味合いのもので、残りの半分は、具体的な用途/アプリケーションのために作り込んだ実用回路となっている。

「Circuits from the Lab 実用回路集」の一例(色度計の実用回路「CN0363」)。回路図(左)などあらゆる設計情報が提供される他、回路を具現化したボード(右)も用意されている

 例えば、化学分析や環境モニタリングで使用される色度計の実用回路として提供している「CN0363」は、2チャンネルの色度計回路で、プログラマブルゲイントランスインピーダンスアンプとデジタル同期検出機能を備え、かなり高性能、高精度な構成となっている。これまでも「CN0312」という色度計の実用回路を提供してきたのだが、CN0312を展示会で披露した際、色度計を手掛けるメーカーのエンジニアから「こんな回路を出されたら、仕事がなくなる」という反応を得たほど、仕上がった回路だった。CN0363はそれをさらにバージョンアップさせた回路であり、“想像を超える可能性”が提供できるソリューションの1つといえるだろう。

 開発リソースが不足がちなコアマーケットにおいて、この実用回路集は、設計開発の短縮に貢献するソリューションであり、今後も実用回路の数を増やしながら、アピールをしていきたい。

IoTでも、独自価値を提供

――IoT(モノのインターネット)への取り組み状況はいかがですか。

馬渡氏 IoTは、自動車、産業機器など注力するアプリケーション分野全てに関わってくる要素であり、注目している。

 既に、各注力セグメント担当部門を横断的に結び、IoT向けのソリューション/ビジネスを開発するプロジェクトも発足させている。

 当社がターゲットとしていくのは、高精度のセンサー検知を要求するIoTシステムであり、そうしたシステムに向けたリファレンスキット、実用回路をそろえていっている。

 さらに、このほどPTCと協業し、「ThingWorx IoTプラットフォーム」を利用した「センサーTOクラウド」をアナログ・デバイセズが提供することになった。単純にセンサーノードに対しデバイスを提供するだけにとどまらず、クラウド環境や、ディープラーニング(深層学習)アルゴリズムなど、一歩先を行く、革新的な価値も提供していくつもりだ。



提供:アナログ・デバイセズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2016年2月11日

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