SiCウエハー市場、単価下落で伸び率鈍化:2035年には6195億円に拡大も
富士経済は、パワー半導体向けウエハーの世界市場について、2035年までの予測を発表した。特に注目しているがSiCウエハー市場で、2024年の1436億円に対し、2035年は6195億円と約4.3倍に拡大すると予測した。
富士経済は2025年5月、パワー半導体向けウエハーの世界市場を調査し、2035年までの予測を発表した。特に注目しているが炭化ケイ素(SiC)ウエハー市場で、2024年の1436億円に対し、2035年は6195億円と約4.3倍に拡大すると予測した。
今回の調査は、パワー半導体に向けたシリコンウエハーやSiCベアウエハー、SiCエピウエハー、窒化ガリウム(GaN)ウエハー、酸化ガリウムウエハー、ダイヤモンドウエハー、窒化アルミニウムウエハーおよび、二酸化ゲルマニウムウエハーの8品目を対象とした。調査期間は2025年2〜3月。
今回注目したのがSiCウエハー市場。2024年はSiCパワー半導体の需要が鈍化し、その影響を受けた。こうした中で中国ウエハーメーカーを中心に販売を伸ばし、数量(面積)ベースでは前年比81.9%増となった。ただ、安価な製品が増えたことで6インチウエハーの価格が下落。金額ベースでは前年比46.1%増にとどまった。
2025年は販売数量、金額ベースともに前年比20%増程度になるとみている。その理由はパワー半導体メーカーがSiCパワー半導体用8インチ製造ラインに対する設備投資を先送りしたためである。その後は8インチウエハーの市場も拡大するとみられているが、単価下落の影響で金額ベースだと、販売数量ほどの伸び率は期待できないとみている。
SiCウエハー市場をサイズ別にみると、6インチウエハーが販売枚数ベースで9割以上を占め、今後も主流となる。4インチウエハーは中国など一部エリアで展開されているが減少傾向にある。一方、8インチウエハーは中国などで外販が始まっており、2026年以降は需要が急増すると予測した。
ダイヤモンドウエハー、2035年に46億円の市場規模へ
もう一つ注目市場として挙げたのが、ダイヤモンドウエハーや窒化アルミニウムウエハー、二酸化ゲルマニウムウエハーといった次々世代の半導体ウエハーである。ダイヤモンドウエハーは2026年より市場が立ち上がると予測。特に2インチウエハーの実用化によってダイヤモンドパワー半導体の市場形成が進み、2035年には46億円規模に達すると予測した。
窒化アルミニウムウエハーは、4インチウエハーのサンプル出荷が始まった。応用できる領域も拡大しており、今後は本格量産への移行が期待されている。二酸化ゲルマニウムウエハーは、6インチエピウエハーの展開が予定されており、2030年にかけて販売が始まるとみられている。
なお、シリコンウエハーについては、シリコンパワー半導体市場に連動する形で2024年は市場が縮小した。2025年以降は堅調に拡大するとみている。GaN単結晶ウエハーや酸化ガリウムウエハーは、6インチウエハーの実用化に伴い、市場が拡大すると予測した。
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