ルネサス、DALI照明制御で無線版とPLC版を開発:施工業者のニーズから生まれた(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスはこのほど、信号線を使用せずに、LED照明をネットワーク制御できる2種類のシステムを開発した。LED照明のネットワーク制御化の大きな障壁となっている初期導入コストを大幅に低減できる技術として、2016年4月以降に本格的なビジネス展開を開始する方針だ。
実証試験や市場の声を通じソリューションを磨く方針
無線、PLCともに、制御用通信プロトコルとしてDALIを採用。DALIは国際規格であり、欧州を中心に普及するが、国内では普及があまり進んでいない。「現状は国内照明メーカーの独自プロトコルが主流だが、ユーザー側はメーカーを問わず利用できるオープン規格を求める声が強く、今後、国内でも普及が進むと判断しDALIを採用した」と説明する。
無線によるソリューションは、920MHz帯無線通信を採用した。
DALIを無線化した場合、伝送遅延を規定内に収めるソフトウェア処理技術がカギとなる。ルネサスでは2015年11月から、武蔵事業所(東京都小平市)の一部オフィスの照明器具を使い実証実験を実施。「実証実験を通じたソフトウェア改良を行った結果、DALI規格を満たす通信を実現した」とし、実用化のめどを付けた状態にある。
一方のPLCによるソリューションは、スマートメーターなどで実績のある独自PLC技術「Flexible PLC」を使用。この独自技術は、さまざまな通信プロトコルに対応できるフレキシブルさが特徴で、DALI通信にも容易に対応。PLCで懸念される耐ノイズ性にも優れ、配線長1kmでも安定した通信が行えるとする。
ルネサスでは、構築した2種のソリューションのレファレンスモジュールを使って、さらに施工業者や照明器具メーカーの反応を確認し、2016年度以降の事業化に向けてソリューションの質を高める方針。その一環として2016年1月13〜15日に開催される展示会「ライティングジャパン」に、DALI規格を推進する欧州照明メーカーHelvarの国内総代理店であるレイオスと共同で出展。LEDネットワーク制御ソリューションのデモを実施するという。
「LED照明にネットワーク制御機能を付加することで、さらに5〜20%の省エネ化が図れるとされる。さらに、調光や調色を時間やシーンに合わせて行うことで、業務効率や学習効果を高められるとの説もあり、ネットワークにつながる照明の価値は高い。ネットワーク化の障壁である設置コストを“Non-Wiredソリューション”であれば、削減できる。今のところ、他ではほとんど実現されていない無線版DALI、PLC版DALIのソリューションをいち早く完成させ、“つながる照明”の需要を取り込んでいく」としている。
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