ダイエットで脳が壊れる? 危険な“負の連鎖”:世界を「数字」で回してみよう(25) ダイエット(4/7 ページ)
ある晩、風呂に入ろうとしていた私の体を見て、娘が悲痛な叫びをあげました。鏡を見ると、びっくりするほど痩せ細った私が映っていたのです。今回は、ダイエッターにとって決してひとごとではない“ダイエットの負の連鎖”、つまり摂食障害の深刻さについて数字を分析してみましょう。
若い女性の死因の大部分が「摂食障害」!?
厚生労働省が発表している資料には、こんなデータがあります。
- 思春期/青年期女性の発病率:1000人中1〜2人 (0.1%)
- 快癒可能性:4年未満では約30%、4-10年で50%で、10年で70%
- 死亡率:10%
その資料からは、「若い女性の1万人中、1〜2人が、拒食症で死んでいる(0.001 x 0.1= 0.01%)」ことになります。
ちなみに、私が作成中のシミュレーターで使っている平成22年(2010年)の人口データでは、15〜19歳の死亡率は1万人中2人で、20歳から24歳の死亡率は1万人中3人となっています。
―― と、ここまで書いて、まさに、今、気がついたのです(本当)が、
計算上、「わが国の若い女性の半分以上(または、大部分)の死因が、拒食症である」ということになってしまうのです*)。
*)私の誤解や計算ミスがあるなら(喜んで)訂正に応じますので、ご連絡ください。
正直、私は今、かなりの衝撃を受けています。
「若い女性は、死ぬためにダイエットをしている」という解釈も成り立つからです(もちろん、極論ですが)。
そして、同時に、なぜ、フランスだけでなく、イタリア、イスラエル、スペインまでもが、「一体、何考えているんだ?」と思えるような法律を制定し、または、しようとしているのか、ようやく理解するに至ったのです(後述)。
江端智一「拒食症」疑惑を検証する
さて、冒頭の「江端智一の『拒食症』疑惑」について、検証してみたいと思います。
心理的問題については、少なくとも「キレイになりたい」という気持ちは皆無でした。何より私は、鏡を見て「私って、本当にナイスミドルだよな」と思えるマインドがあるくらいですから*)。
*)「本当に、お前って奴は、どうやったらそんなに『幸せ』になれるんだ」と、結構な頻度で言われています(参考)
何より、この体重で拒食症を標榜(ひょうぼう)したら、世界中の拒食症患者の皆さんから、一斉にツッコミ(というか、叱責(しっせき)、激怒)を受けそうです。
そもそも、今回の私のダイエットの目的は「自分のカラダを『制御装置』に見立てた、ダイエットデータ収集と、江端ダイエット仮説の検証」でしたから。
しかし、ダイエットが長期化するにつれて、「空腹に苦痛を感じない」「神経が研ぎ澄まされて、簡単に『神を降ろせる』*)」「不眠が日常化しているのにもかかわらず、元気に通勤できる」ようになってきました。
これらは、どう考えたって異常な状態です。
しかし、今になって思えば、「それに気が付かない」あるいは「気がついているけど目を背ける」という精神状態が、少しずつ構築されていったように思えるのです。
特に、「空腹に苦痛を感じなくなる」という状態は、なかなか興味深い、スピリチュアルな体験でした。
(あ、今、お腹減っているなぁ)という状態を、まるでひとごとのように感じることができるようになるのです。
「つらい」「苦しい」とか「何か食べたい」という気持ちが、「空腹」と離れて感じることができるようになるのです(本当)。
特に、70kgを切った後のダイエット(第2次ダイエット計画)では、今の体重まで、一気に急降下でした(いわゆる「停滞期」なし)。この状態になった後のダイエットは、毎日体重計に乗るのが楽しく、気分は高揚し、ともかくとてもラクチンでした。
そして、制御系のエンジニアである私は、摂食管理と体重データの解析だけで、自分の思い通りの体重を「コントロールできる」ことに自己陶酔し、他人の意見など聞く耳を持たなかったのです。
ですから、娘に「パパ! ちょっと気がついているの! 本当に異常な状態になっているんだよ!!」と一喝されなければ、間違いなく、私は今でも「仮説検証」の作業を継続していたハズです。
結果として、私は「拒食症にはなっていなかったものの、ダイエットによって脳の機能の破壊が始まっていた」ことは認めざるを得ないと考えています。
そして、こんな簡単に、自分の脳を狂わせることができる、という事実に、戦りつを覚えています。
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