ダイエットで脳が壊れる? 危険な“負の連鎖”:世界を「数字」で回してみよう(25) ダイエット(6/7 ページ)
ある晩、風呂に入ろうとしていた私の体を見て、娘が悲痛な叫びをあげました。鏡を見ると、びっくりするほど痩せ細った私が映っていたのです。今回は、ダイエッターにとって決してひとごとではない“ダイエットの負の連鎖”、つまり摂食障害の深刻さについて数字を分析してみましょう。
日本でも“痩せすぎモデル採用禁止”に?
わが国は、伝統的に、欧米法に『右に習え』で法律が制定されてきたという事実がありますし、摂食障害は、先進国共通の深刻な社会問題にもなっています。
ですから私は、わが国でもフランスと同様の法律が制定されるのは、時間の問題だろうと思っています。
例えば ――
- 証拠押収のために、日本のアイドル事務所に、体重計を脇に抱えた女性警官隊が突入している様子がニュースに流れる
- 「「ダイエットで美しくなれる」は、本当か?」というような記事を掲載している、EE Times Japanの事務所(赤坂)と、私の自宅に、同時刻に警官隊が突入。編集担当のMさんと私の身柄を拘束。さらには、わが家の6台のPCとHDDを全部持ち去っていく
―― という日が来ることは、それほど遠くないのかもしれません。
では、今回の内容をまとめたいと思います。
【1】拒食症も過食症も、「キレイになりたい」という思いを持つ若い女性に現われやすい精神疾患の一種であり、多くの場合、「ダイエット」をきっかけとして始まる
【2】「人の意見を聞かなくなる」「自分を客観的に見ることができなくなる(太っていると思い込む)」などが特徴で、最悪の場合「自力で食事をコントロールすることができなくなる(空腹/満腹を感じられなくなる、食べたものを嘔吐してしまう)
【3】ダイエットによって、脳へのエネルギー補給が行われなくなることで、さらに過激なダイエットが加速する。この「負のスパイラル」によって、最悪、死に至ることもある
【4】拒食症による死亡率は1万人に1〜2人程度と推定されているが、計算上、それは、わが国の若い女性の死亡原因の50%以上を占めていることになる
【5】江端(筆者)のダイエット中のふるまいを検証してみた結果、江端もまた、日常的に正常な判断ができなくなっていたことが判明した。このことより、脳の機能は、ダイエットによってかなり簡単に破壊できることが分かった
【6】フランスでは2015年、「痩せ過ぎのモデルの雇用を禁止する法律」が制定された。これは、日本の5倍から7倍の拒食症の患者数(および死亡数)という、国家レベルの非常事態が背景にあると推認される
【7】この法律(または、その適用範囲を拡大した法律)が、日本でも制定される可能性は、極めて高いと考えられる
以上です。
実は私、この年末年始の休みを使って、コンピュータの中で動く仮想人格プログラム「バーチャル江端智一」を作り上げました*)。
*)単純な推論エンジンを利用した、簡単なものです。
この正月は、その「バーチャル江端智一」が、何度もダイエットに挫折していく様子や、拒食症に突入していく様子を、つぶさにPCの画面で見続けていました(実際、何人かのバーチャル江端智一を、死に至らしめています)。
次回、この「バーチャル江端智一」が指し示してくれた、江端ダイエット論の最終結論、
人類は、“ダイエットに失敗する”ようにできている
を、お話したいと思います。
謝辞
本件のインタビューに応じて頂いた、平成横浜病院 総合健診センターの管理栄養士の、伊藤先生、久保寺先生に、心より感謝申し上げます。
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