バッテリー動作で持ち運びが可能な生体信号計測システム:福田昭のデバイス通信 ISSCC 2016プレビュー(10)(1/2 ページ)
10回にわたりお届けしてきた「ISSCC 2016」プレビュー。最終回となる今回は、セッション27と28のおすすめ講演を紹介する。セッション28の主要テーマは医療エレクトロニクスだ。バッテリーで動作し、持ち運びが可能な生体信号計測システムなどが発表される。
ハイブリッド方式でデータ変換の電力効率を向上
前回に続き、ISSCC 2016の技術講演プレビューをお届けする。技術講演の最終日である、2016年2月3日(水曜日)の午後に発表予定のセッションから、注目の講演をご紹介しよう。今回は、セッション27とセッション28の主な講演をご説明する。
セッション27のメインテーマは「データ・コンバータ」、サブテーマは「ハイブリッドとナイキストのデータ・コンバータ」である。サブテーマにあるように、2つの変換アーキテクチャを組み合わせたハイブリッド方式のデータ・コンバータの発表が今回は目立つ。
MediaTekは、オーバーサンプリング(ΔΣ)方式と逐次比較(SAR)方式を組み合わせたハイブリッド方式の高性能A-D変換器を開発した(講演番号27.2)。SNDR(Signal-to-Noise and Distortion Ratio)は帯域1kHzのときに101dB、帯域4kHzのときに96.1dB(有効ビット数換算で15.6ビット)と高い。内部D-A変換器に対する非整合誤差整形回路を考案、導入することで、高い線形性を得た。SFDR(Spurious Free Dynamic Range)は105dBとこれも高い。帯域が4kHzのときに消費電力は15.7μWと極めて低い。製造技術は55nmのCMOSである。
Marvellは、シリコン面積が0.076mm2と小さな12ビットA-D変換器を発表する(講演番号27.8)。サンプル速度は600Mサンプル/秒。サブレンジング逐次比較(SAR)方式とΔΣ方式を組み合わせた4チャンネル・インタリーブのハイブリッドの変換アーキテクチャを採用した。SNDRは60.7dB(有効ビット数換算で9.8ビット)。消費電力は26mWとかなり低い。製造技術は28nmのCMOS。
ハイブリッド方式以外では、Maxim Integrated Productsが4Gサンプル/秒と高速のA-D変換器を発表する(講演番号27.5)。時間インタリーブの逐次比較方式を採用した。入力周波数帯域は4GHzと広い。製造技術は65nmのCMOSである。またBroadcomも、4Gサンプル/秒と高速の13ビットA-D変換器を報告する(講演番号27.6)。製造技術は16nmのCMOSである。
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