R&D投資の積み重ねが生んだハンドヘルドオシロ:5種類の測定器を1つの筐体に(2/2 ページ)
ローデ・シュワルツ・ジャパンは2016年1月、ハンドヘルドオシロスコープ「R&S Scope Rider」を発表した。多くの機能を搭載し、電子機器の設置やメンテナンス業務だけでなく、開発用としても使える最適な1台という。同社の関野敏正氏に製品の概要や特長、今後の展開について聞いた。
CAT IV 600Vの絶縁性能
同製品は、劣悪な環境下においての現場作業においても貢献する。筐体は、IP51保護等級をクリアし、粉じんや水滴がかかるような状況下での使用が可能。電気測定器の安全規格「IEC61010-1」で規定されているカテゴリー「CAT IV 600V」「CAT III 1000V」で定められた絶縁性能を満たしたことで、高電圧環境下での作業も可能にした。
関野氏は、「ハンドヘルドオシロスコープでCAT IV 600Vまで対応したのは、まだ当社とFlukeの2社しかない。通常、回路同士は共通のグラウンドにつながっているが、当製品はそれぞれ浮いている状態(フローティング状態)に設計を工夫したことで、高電圧を測ることができる」と語る。さらに、全ての軍用規格に準拠した機械的負荷試験も合格し、軍用機器メンテナンスにも活用できるとしている。
無線LANを搭載
同製品は、micro SD カードに加えて、USBやイーサネットをサポートしているため、データの保存や転送を行える。無線LANも搭載し、容易に近づくことが困難な高電圧環境下でも、スマートフォンやタブレット端末から、全ての操作メニューをwebブラウザから見ることが可能だ。「無線LANを搭載している測定器は多くない。無線LAN自体が電波を出すため、測定に影響を及ぼす場合があるからだ。当製品はシールドをしっかり行い、かつ、500MHzまでの計測なので無線LANの影響を受けない」(関野氏)とする。
売り上げの15%をR&Dに投資
同製品に多くの機能を搭載できた理由として、関野氏は、専用のASIC/10ビットコンバーターを自社(ドイツ)で製造していることを1番に挙げる。「5年前にオシロスコープに参入すると決めたときに、他社との違いを出すために考えたのがASICだった。当社のデスクトップ型オシロスコープの波形更新速度は、100万回/秒。当時、そこまでの速度を実現できたのは当社しかないくらい、最先端の技術開発にこだわってきた」と語る。
最先端の技術開発を実現できた理由として、関野氏は、毎年の売り上げ15%を研究開発(R&D)に投資していることを挙げる。「当社は株式を公開していないため、株主に影響を受けることがなく、その分製品に投資できている」(関野氏)とした。
自動車メーカーを中心に展開
2チャンネルと4チャンネルモデル、ミックスドシグナル機能搭載モデルがあり、各モデルで周波数帯域60MHz/100MHz/200MHz/350MHz/500MHzから選択できる。本体価格は60MHzの2チャンネルモデルで、32万1000円(税別)である。関野氏は、「自動車メーカーや、ビル/工場のメンテナンス事業者を中心に拡販を進めていく」と語る。
今後は、周波数を解析してノイズを見る「スペクトラム解析機能」や、異常が起こったときのみデータを記録する「ヒストリー機能」を追加していく予定だ。
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