次世代FinFETへの移行を加速、SamsungとTSMC:需要のけん引役はAppleとQualcomm
Samsung ElectronicsとTSMCが、次世代FinFETチップへの取り組みを加速させている。14/16nm以降のチップの量産が増加するかは、最大顧客ともいえるAppleとQualcommにかかっているようだ。
Samsung、14nm LPPプロセスによる量産を開始
Samsung ElectronicsとTSMCが、次世代FinFETチップの製造を進めている。Samsungは、主要顧客であるQualcommからの受注を一手に引き受け、14nm Low Power Plus(LPP)プロセス技術を適用して「Snapdragon 820」プロセッサの量産を開始したと発表した。一方TSMCは、同社のプロセス技術を適用したチップをApple向けに提供するとみられている。
Samsungは2016年1月に、14nm LPPプロセス技術による量産開始を発表した。Samsung Semiconductorのファウンドリマーケティング担当シニアディレクタを務めるKelvin Low氏は、「14nm LPPプロセスは、Low Power Early(LPE)プロセスと比べて14%高い性能を実現でき、電力プロファイルは0.8Vだ。ダイサイズは、28nmプロセスに比べて半分近く(0.55倍)になり、他のファウンドリが製造しているFinFETに比べると10%小さくなる」と述べている。
Low氏は、「今回、ティア1メーカーからの強力なサポートを得ることができた。当社が何年も前にファウンドリ事業を開始した当時は特に、Samsungと顧客企業とが競合するのではないかという懸念が常にあった」と述べる。
同氏は、「Samsungはこれまで、モバイルおよびコンシューマー市場において、圧倒的な成功を収めてきた。将来的には、高密度なロジックを必要とするネットワーク/サーバ分野へと移行していく予定だ」と述べている。
需要は高まるか
米国の市場調査会社であるInternational Business Strategies(IBS)の創設者であり、CEO(最高経営責任者)を務めるHandel Jones氏 は、「14nm LPPが素晴らしいタイミングで採用され、代替サプライヤーとしてGLOBALFOUNDRIESを得ることができ、幸先の良いスタートだといえる。ただし、14nm LPPプロセス技術そのものによって需要を高められるかどうかは不明だ」と指摘する。
Jones氏は、EE Timesの取材に対し、「Appleは現在、次世代技術をけん引するという極めて重要な役割を担っている。そもそも、顧客企業の数自体が非常に少ない。Appleがトップを走り、Qualcommが少し遅れてその後を追う。NVIDIAもけん引役だが、生産量がそれほど多くない。Xilinxは技術リーダーではあるが、同じく生産量は多くはない。AppleとQualcommからの受注を確保できなければ、その他の企業に自社の製造能力を十分に使ってもらうことは不可能だろう」と指摘する。
Samsungの成功は、同社のスマートフォンがいかに真の革新性を備えていて、どれくらいの売上高を上げられるかによって、大きく左右される。Jones氏は今のところ、次世代プロセス技術において成功を収められるサプライヤーとして、AppleとTSMCを支持する方向に傾きつつあるという。
同氏は、「中国が、引き続き勢力を増している。2015年の世界スマートフォン出荷台数全体の50%以上を中国メーカーが製造していて、その割合は今後もさらに拡大する見込みだ」と述べる。
また同氏は、「TSMCの計画は容易に実行可能であるようだが、Samsungのロードマップはやや漠然としているのではないだろうか。両社は、モデムの製造においてはQualcommからの受注、スマートフォンのプロセッサにおいてはAppleからの受注で競争している。両社とも、非常に優れたメモリ製造技術を保有していながら、なぜそこにもっと注力しないのだろうか」と指摘している。
Samsungは10nmプロセス技術に移行中であり、2016年度末にも量産を始めるとされている。Low氏は、10nmプロセスを採用したチップは、まずはハイエンドのモバイル製品向けに製造され、その後、ネットワーキングやサーバなどにも採用されるとみている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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