伝送速度1Tbpsを実現する光通信技術、従来比10倍:既設の光ファイバー網を活用可能(1/2 ページ)
三菱電機は2016年2月、光ファイバー通信において、1組の送受信器で伝送速度1Tビット/秒を実現する光送受信技術を開発したと発表した。周波数利用効率は9.2ビット/秒/Hzを実証したという。同社によると、2016年1月時点で「世界最高」の周波数利用効率である。
「世界最高」の周波数利用効率
三菱電機は2016年2月、光ファイバー通信において、1組の送受信器で伝送速度1Tビット/秒(Tbps)を実現する光送受信技術を開発したと発表した*)。
*)1Tbps:1秒間でDVD約27枚分のデータ転送
総務省の「平成27年度情報通信白書」によると、IoT(モノのインターネット)デバイスは2020年に530億個になるといわれ、通信量の爆発的な増大が懸念されている。トラフィックの増加に対応する手段として、伝送容量の高い光ファイバー網に置き換える方法があるが、置き換えには「莫大なコストが掛かる」(三菱電機)という。つまり、既存の光ファイバー網を活用した容量拡大技術が必要になる。
三菱電機は今回、処理能力を向上させる「マルチサブキャリア光送受信技術」とデータの損傷を防止する「パイロット信号」を開発し、既存の光ファイバーを活用して伝送速度1Tbpsを実現した。現行の伝送速度100Gbpsと比較して約10倍である。
伝送容量の技術動向。現行は1組の送受信器当たり伝送速度100Gbpsである。今までの技術的な進歩でも既存の光ファイバーを活用した容量拡大技術が用いられてきたが、IoTデバイスの増加に伴うトラフィックの増加に対しては、伝送容量の高い光ファイバーに置き換える必要性が出てくるという。三菱電機は今回、伝送速度1Tbpsを実現したことで、光ファイバー網を置き換える必要がなくなるとする。「光伝送機器ベンダー各社は現在、伝送容量400Gbpsを実用検証中である」(三菱電機)とした (クリックで拡大) 出典:三菱電機
これらの技術は、英国ユニバーシティカレッジロンドンが持つ「Optical Networks Group」の設備を用いて実証実験を実施。1組の送受信器による1Tbps通信において周波数利用効率9.2bps/Hzを実証したとしている。同社によると、2016年1月時点で「世界最高」の周波数利用効率とした*)。これにより、既存の光ファイバー網をそのまま活用して、容量の大きな動画やデータをスムーズに受け取ることができるという。
*)同社が2013年2月に発表した伝送速度100Gbpsの技術は、約2bps/Hzの周波数利用効率だったという。
11本のサブキャリアを高密度に一本化
処理能力を向上させるマルチサブキャリア光送受信技術とは、11本の波(サブキャリア)をひとまとめにして送信する方式である。従来は、シングルキャリアのみで送信していたため、1組の送受信器では100Gbpsまでしか伝送できなかったという。
同技術は、11本のサブキャリアを高密度にして1組の送受信器で伝送できるため、既設の光ファイバー網をそのまま活用し、従来比10倍の1Tbpsの伝送を可能にしている。
なぜ、伝送速度100Gbpsから1Tbpsと従来比10倍となっているのに、サブキャリアが10本ではなく、11本になったのかについては、「エラー訂正をするための情報をオーバーヘッドとして供給する必要がある」(三菱電機)とした。
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