CPUアーキテクチャの基礎:福田昭のデバイス通信 ARMが語る、最先端メモリに対する期待(5)(2/2 ページ)
今回から、CPUアーキテクチャとメモリ・システムの関連について掘り下げていこう。まずは5段パイプラインアークテクチャを例に挙げ、メモリ・システムとの関連をみていく。
インオーダー実行とアウトオブオーダー実行
全ての命令をプログラムの順番通りに実行していくこと(「インオーダー実行」と呼ぶ)は、実効的な処理性能を高めるときには望ましくないことがある。例えば、キャッシュにアクセスするときに待ち時間が発生したり、あるいは、実行するのに時間のかかる命令に遭遇したりすると、処理性能が低下する。
そこで、あえて命令の実行順序を入れ替えることで待ち時間を削減し、実効的な処理性能を上げる手法がある。これが「アウトオブオーダー実行」である。複数のパイプラインを備えて並列に実行するスーパースカラー構造のCPUでは特に、アウトオブオーダー実行が威力を発揮する。
ただし、アウトオブオーダー実行を採用すると実効的なスループットは高まるものの、回路は大規模になる。シリコン面積と消費電力は増加する。そして、メモリ・システムが複雑になる。
マルチコアという選択肢
これまで説明してきたのは、CPUコアが1個、すなわちシングルコアで処理性能を向上させる工夫である。しかし既に説明したように、シングルコアで性能を向上させる手段は、消費電力の制約によって行き詰まりを迎えている。
そこでマルチコアという選択肢が登場した。シングルコアでパイプラインを増やす代わりに、CPUコアの数を増やすことによって性能向上を図る。一般的には、シングルコアで動作周波数を上げたり、能力を高めたりすることに比べると、少ない消費電力でスループットを高められる。
ただし複数のCPUコアを高効率で利用するソフトウェアの作成と、CPUコア間の物理的な通信リンクの確立という課題が生じる。そしてここでもまた、メモリ・システムが複雑になるのだ。
(次回に続く)
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