有機ELの長寿命化に貢献する標準ガスバリアフィルム:粘土とポリイミドで(1/2 ページ)
産業技術総合研究所(産総研)は2016年3月3日、ガス透過性が従来より1000分の1という高いガスバリア性を誇る標準ガスバリアフィルムを開発したと発表した。
産業技術総合研究所(産総研)は2016年3月3日、粘土をポリイミドを原料とする極めてガス透過性が小さい標準ガスバリアフィルムを開発したと発表した。水蒸気や酸素に触れることで劣化する有機化合物を使う有機ELディスプレイや有機太陽電池などの長寿命化への貢献が期待される。
有機ELディスプレイや有機EL照明では、プラスチックフィルム上に有機ELを形成すると、フィルムを透過した水蒸気や酸素が有機ELを劣化させる。このことが原因で、十分な製品寿命を確保できない課題を抱える。有機太陽電池などの有機エレクトロニクスデバイスでも同様だ。
この課題に対応するため、水蒸気や酸素を透過させないハイガスバリア層をプラスチックフィルム上にコーティングして、有機エレクトロニクスデバイスの劣化を防いでいる。このハイガスバリア層には一般に、水蒸気透過度が10-6g m-2 day-1(g m-2 day-1=面積が1m2のガスバリアフィルムを透過する1日当たりの水蒸気の重さ[グラム])程度の高いバリア性が求められる。
こうした極めて小さい水蒸気透過度を評価するには、ガスバリア性評価装置が用いられる。ただ、ガスバリア性評価装置を校正するには、基準となる10-6g m-2 day-1レベルの水蒸気透過度をもつ「標準ガスバリアフィルム」が不可欠になるが、これまでそのような標準ガスバリアフィルムがなく、測定値の信頼性自体が確保できていなかった。
今回、産総研が開発したのは、ガスバリア性評価に用いる標準ガスバリアフィルムで、「世界最高水準」(産総研)という10-6g m-2 day-1レベルの水蒸気透過度を持つという。産総研によると、従来の標準ガスバリアフィルムの水蒸気透過度よりも、1000分の1以下という微小な値という。
開発した標準ガスバリアフィルムは、緻密に積層した粘土結晶の間をバインダーが埋める構造で高いガスバリア性を誇る「クレースト」を使用。クレーストは、粘土とバインダーの混合割合などを調整して、水蒸気透過度を制御できる素材だ。今回、バインダーにポリイミドを採用し、温度40℃、相対湿度90%条件で、水蒸気透過度が2.0×10-3g m-2 day-1になるよう調整して作製。このクレーストを穴の開いたステンレス薄板に熱プレスにより直接接合して標準ガスバリアフィルムを作製した。接合に接着剤を用いていないため「水蒸気が接着剤を透過することはない」(産総研)という。
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