ちょこちょこ給電で、製造ラインの効率を改善:無人搬送車のわずかな停止時に非接触で充電
ビー・アンド・プラスは、「スマートエネルギーWeek2016」で、独自のワイヤレス給電技術を応用した事例として、AGV(無人搬送車)のワイヤレス充電システムなどを紹介した。
ワイヤレス給電機器メーカーのビー・アンド・プラスは、「スマートエネルギーWeek2016」(2016年3月2〜4日、東京ビッグサイト)で、独自のワイヤレス給電技術を応用した事例として、AGV(無人搬送車)のワイヤレス充電システムなどを紹介した。
自動車などの製造現場では、ワーク搬送用のAGVが、生産計画に沿って作業工程間を移動する。ところが、従来はAGVに搭載された電池の容量が少なくなると、電池に充電するか電池の交換が必要となり、定期的に充電ステーションへ戻る必要があった。場合によっては、AGVに給電/充電するために、作業者が電源側とコネクター接続する必要もあり、作業効率を低下させる一因にもなっていた。
同社のワイヤレス給電技術は、電磁結合方式で数十kHzの周波数帯を用いているのが特長だ。また、給電と信号伝送を同時に行うことができ、遮蔽物やノイズ、水や汚れなど耐環境性にも優れている。伝送電力は0.06〜1000Wに対応しており、伝送距離は最大26mmである。ワイヤレス給電規格としてWPC(ワイヤレスパワーコンソーシアム)が策定したQi規格があるが、これだと伝送距離は最大7mm(伝送電力は最大15W)である。Qi規格に比べて伝送距離が長いため、より現実的な給電システムを構築することが可能となる。また、充電ユニットは最大210W(出力電圧は最大30V、出力電流は最大7A)に対応できるという。
同社の展示ブースには、給電を行うための固定側と、AGVを想定した受電用の可動側を設置。可動側は鉛電池を搭載したAGVと、リチウムイオン電池を搭載したAGVを想定して、2台のデモ機を用意した。固定側は主に電源ユニットと給電ヘッド、充電側は主に受電ヘッドと充電ユニットで、それぞれ構成されている。
ワーク搬送用のAGVが、部品や治具の積み込みのために製造ラインで一時停止している間に、AGVに取り付けられた受電ヘッドと、生産ライン上に固定してある給電ヘッドを対向させる。伝送距離内であればこれだけで、AGVに搭載された電池に継ぎ足し充電を自動的に行うことができる。「こうした充電システムがない場合、AGVは一度、製造工程とは別な場所に設けられた充電ステーションまで戻って、充電作業を行う必要がある。今回のシステムを用いると、AGVが製造ラインから外れることなく、ちょこちょこ充電で動作し続けることが可能となる」(説明員)と話す。
自動車メーカーや部品メーカーなどでは、工程作業時間の短縮による生産性向上の要求が高い。製造ラインの構成などにもよるが、同システムを導入したユーザーの中には「生産効率を2倍に改善することができた」(説明員)という報告もあるという。
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