新製品攻勢でタイミング市場に変化を起こすSiTime:真空管、フィルム、HDDの次は水晶だ(3/4 ページ)
メガチップスの子会社であるSiTimeは、ウェアラブル機器市場を中心にMEMS発振器ビジネスを拡大させている。MEMS技術を活用したTCXO(温度補償型水晶発振器)などの量産を開始し、水晶が主流の発振器市場をシリコン主流の市場へシフトさせようとしている。
次のターゲットは、TCXO、メガヘルツ……
そしてSiTimeは、シリコンが水晶に勝る領域を着実に増やそうとしている。次のターゲットは、キロヘルツTCXO(温度補償型水晶発振器)領域やメガヘルツXO領域。いずれも、精度面などでMEMS発振器が水晶に及ばないとされてきた領域だ。
XOよりも周波数安定性が優れるTCXOは、ウェアラブル機器をはじめとした無線機能を搭載しつつ、消費電力低減が迫られる用途で需要が伸びる。その理由は、クロックの安定性が無線機能などのスリープ時間を長くできるからだ。発振器の周波数安定性が劣れば、正しいタイミングで確実に起動させるため、クロックの誤差を考慮して、早めに無線モジュールのスリープモードを切り上げて、起動させなければならない。逆に正確なクロックの供給が保証されているのであれば、ギリギリまで消費電力の小さいスリープモードを継続できる。SiTimeの試算では、50秒の間隔で起動させる場合、全温度範囲の周波数安定性が200ppmのXOを使用時には10ミリ秒程度のマージンを持たせた早期起動が必要になるが同5ppmのTCXOであれば、0.25ミリ秒のマージンで済むという。消費電流換算にすると、TCXOを搭載することで、3割程度の削減が見込めることになる。
SiTimeは、ウェアラブル機器市場などで需要が伸びるMEMS発振器によるキロヘルツTCXO「SiT1552」の量産をこのほど、開始した。水晶ベースのTCXOと同様、−40〜85℃の全温度範囲で5ppmの周波数安定性を実現した。さらに、パッケージサイズはXO同様、1.5×0.8mmと小さく、1μA以下の消費電流と、MEMS発振器の利点を維持している。
さらに、「水晶ベースのTCXOではできないMEMS TCXOの長所が市場での支持を広げている」という。その長所とは、出力周波数がプログラマブルという点だ。「ウェアラブル機器など消費電力を少しでも削減したい用途では、システム全体の低消費電力化を狙って、システムクロックを最低限に抑える手法が採用されている。水晶では、32.768kHz固定であり、周波数変換器が必要になる。その点、MEMSであれば、1チップで良い」(Sevalia氏)。
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