車載パワートレイン制御用マイコン、燃費を改善:応用性能を3割向上、新たな環境規制にも対応
ルネサス エレクトロニクスは、自動車のパワートレイン制御に向けた32ビットマイコン「RH850/E1M-S2」のサンプル出荷を始めた。従来品に比べて応用性能を約30%向上した。さらなる燃費改善が可能になるとみている。
ルネサス エレクトロニクスは2016年3月、自動車のパワートレイン制御に向けた32ビットマイコン「RH850/E1M-S2」を開発し、サンプル出荷を始めた。従来品に比べて応用性能を約30%向上したことで、燃費改善が可能になるとみている。
RH850/E1M-S2は、新たに開発したCPUコア「G3MH」を搭載している。従来のG3Mコアをベースに、メモリや周辺機能に対するアクセスレイテンシーの改良などを図ることで、エンジン制御システムの応用性能を向上した。燃焼状態や走行状態に合わせた、きめ細かなエンジン制御、あるいはトランスミッション制御を可能とし、燃費向上につながるという。これにより、CO2の排出削減など、強化される環境規制にも対応することができる。
特長の2つ目は、増加する車載センサー数と高速通信への対応である。RH850/E1M-S2では、センサー用デジタル通信規格「SENT(Single Edge Nibble Transmission)」に対応したRSENTを6チャネル内蔵した。デジタル化された約50個のセンサーと通信が可能となる。単一の信号線で通信することができるため、配線の軽量化も可能となる。これとは別に、通信速度が最大5Mビット/秒のCAN FD規格に対応するインタフェースを4チャネル搭載した。他の車載制御ユニットとのデータ伝送を、より高速に行うことができる。従来のCANバスに接続できるモードも備えている。
3つ目はセキュリティ機能をさらに強化したことである。車載セキュリティの標準規格である「SHE(Secure Hardware Extension)/EVITA-Light(E-safety Vehicle Intrusion proTected Application)」に準拠したハードウェアセキュリティモジュール「ICU-S」を搭載した。データの暗号処理や乱数発生の機能を内蔵することで、堅牢性を高めることができる。
もちろん、従来製品「RH850/E1M-S」とはハードウェア/ソフトウェアの互換性を維持しており、最小限の開発工数でアップグレードすることが可能である。パッケージは外形寸法が19×19mmの304端子P-BGAで供給する。
RH850/E1M-S2は、2017年9月より量産を始める。サンプル価格(税別)は1万2000円である。2018年4月には月間10万個規模の生産量を計画している。
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