鳥取の事例にみる、地方製造業“再生”の可能性:勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ(14)(2/5 ページ)
本連載の最終回となる今回は、筆者が鳥取県で行ってきた、雇用創造プロジェクトの支援活動を通じて見えてきたことを紹介したい。素直に考えれば、雇用を創出するには、事業創出/事業拡大が必須になる。だが少ない人口、少ない資金に悩む地方圏の企業には、立ちはだかる壁が幾つもあるのだ。
地方企業に重くのしかかる、ハイテク産業参入の壁
前述の航空機の場合、その特性上、高度な安全性・信頼性確保のため、厳しい品質が要求される。とても一中小企業が単独で参入できるものではない。宇宙産業も同様で、航空機以上に厳しい。2015年に放送された、TBSのテレビドラマ『下町ロケット』に登場する“佃製作所”は、ずば抜けた技術力があったが故に、“帝国重工”へバルブシステムの部品を供給するところまでたどり着けたが、これといった特徴がない一中小企業であるならば、困難な道のりになることは間違いない。
従って、企業は地域においてネットワークを形成し(企業連携)、企業群として、より上位のメーカーから受注を獲得するケースがほとんどである。しかも、発注メーカー側からすればコスト面から一貫生産を要求することが多い。物理的に立地が離れている地方企業に対しては、物流コストがかかる上に、地方に連携できる企業の絶対数がそもそも少ないことから、おのずと都市圏に企業が集中してしまうのは、当たり前だといえる。
ここでは、航空機産業について示したが、いわゆるハイテク産業分野においては、自動車、宇宙、医療といった分野でも似たような構造となっている。日本の成長産業の起爆剤となってほしいこれらハイテク産業分野ではあるものの、地方の中小企業にとって、新規参入の道はなかなか険しい。
地方創生と産業創造:「鳥取県におけるプロジェクトの例」
現在、安倍政権の元、人口減・雇用減に苦しむ地方自治体の活性化を目指し、「地方創生」が叫ばれている。比較的、規模の小さなものは、“町おこし”“村おこし”として活動に取り組む自治体や企業も少なくないが、新たな雇用を生み出す産業をどう育てていくかに関する絶対的な解決策はまだないと筆者は考えている。
筆者らは、この2年半あまり、厚生労働省の『戦略産業雇用創造プロジェクト』の採択を受けた鳥取県の「鳥取県戦略産業雇用創造プロジェクト(略称:CMX)」のボードメンバーとして県内企業の支援を行ってきた。3年という限られた期間で開始した本プロジェクトも、2016年3月末をもって終了を迎える*)。
*)日刊工業新聞社の雑誌『工場管理』の2016年1月特別増大号において、「鳥取発!モノづくり地方創生戦略」として特集も組まれているので、詳細を知りたい人は参照されたい。
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