デジタル化の中で浮沈を決めた“半導体設計の本質”:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(3)(3/3 ページ)
デジタル家電市場で、なぜ台湾のMediaTekは、日本や欧州の名だたる競合半導体メーカーを蹴散らせたのか――。今回も、この10年で大きな成長を遂げた台湾MediaTekの強さに迫る。
微細技術適用もサイズ/価格は……
図3は同時期のMediaTekのODD Blu-ray(光ディスクドライバ)とほぼ同じ用途市場向けに製品化された国内メーカーのチップの様子である。
MediaTekは、アナログ回路をできる限りデジタル化して回路の共通化を行い、180nmという(その当時でも)太線のプロセステクノロジーを用いて、21mm2という面積でチップを実現できていた。
一方、日本メーカーでは、さらに微細なプロセスを用いても、アナログ比率が大きく、トータル面積が大きい。太線プロセスはコストが安い。安いコストで、極小面積を作ることが本当の開発力の1つである。先端プロセスならば面積は小さくなる。しかしコストはかえって高くつく場合も多い。
まったく異なるアプローチ
MediaTekはデジタル化できる部分は、極限までデジタル化した。さらには機能を全体として俯瞰(ふかん)し、共通化によって面積を削減するなど、それまでの慣習とまったく異なるアプローチを行った。MediaTekが世界のデジタル家電ビジネスで日本や欧米のデジタル半導体メーカーをことごとく退けたのには、いくつも理由がある。上記はその一例である。
次回は過去10年を考える上で、“「追い付く」と「追い越す」の違い”について扱いたい。
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筆者Profile
清水洋治(しみず ひろはる)/技術コンサルタント
ルネサス エレクトロニクスや米国のスタートアップなど半導体メーカーにて 2015年まで30年間にわたって半導体開発やマーケット活動に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見と経験を持っている。2015年から、半導体、基板および、それらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの上席アナリスト。テカナリエは設計コンサルタントや人材育成なども行っている。
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