負の磁気抵抗効果、非磁性の導電性物質で初観測:発現メカニズムも明らかに(1/2 ページ)
物質・材料研究機構(NIMS)を中心とした研究グループは、非磁性の導電性物質であるパラジウム−コバルト酸化物に、「負の磁気抵抗効果」があることを発見した。普遍的な現象であることも確認した。新たなセンサー素子などの開発につながる可能性が高い。
物質・材料研究機構(NIMS)の量子物性グループとアメリカ強磁場研究所、オランダ強磁場研究所、首都大学東京、及び京都大学らによる研究グループは2016年3月、非磁性の導電性物質であるパラジウム−コバルト酸化物(PdCoO2)に、「負の磁気抵抗効果」があることを発見したと発表した。他の姉妹物質でも同様の現象を確認しており、普遍的な現象であることが分かった。新たなセンサー素子などの開発につながる可能性が高い。
物質の導電性が、磁場によって変化する磁気抵抗効果を応用した事例としては、ハードディスクなどがある。一般的には、磁場によって電気抵抗が増加する「正の磁気抵抗効果」を利用したものがほとんどである。これに対し負の磁気抵抗効果は、磁場によって伝導電子が一段と動きやすくなる現象である。ところがこの現象は、これまで理論的示唆にとどまっており、伝導電子を含む通常金属では、実際に観測されたことがないという。
研究グループは、負の磁気抵抗効果を研究するに当たって、PdCoO2という非磁性の導電性物質に着目した。この酸化物は、導電性が極めて高いパラジウム層と、コバルト−酸素で構成される層を互いに並べた積層構造となっている。
今回試作したPdCoO2の単結晶には、測定用の端子を設けており、磁場をかけて層間の電気抵抗を測定した。磁場をパラジウム伝導面に対して垂直方向にかけていくと、電気抵抗が単調にマイナス方向へと減少していく、負の磁気抵抗効果を観測することができた。磁場を30テスラまでかけると、電気抵抗は磁場がない時に比べて70%も小さくなることが分かった。
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