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FinFETの父、「半導体業界は次の100年も続く」:新しいトランジスタのアイデアも(3/3 ページ)
“FinFETの父”と呼ばれる研究者のChenming Hu氏は、Synopsysのユーザー向けイベントで、「半導体業界が次の100年も続くと確信している」と述べ、業界の未来が決して暗いものではないと主張した。同氏は新しいトランジスタのアイデアとして、NC-FET(負性容量トランジスタ)についても言及した。
トンネルトランジスタとスピントロニクスへの期待は?
ただし、Hu氏は、トンネルトランジスタとスピントロニクスに関しては「展望はそれほど明るくない」と予想している。「トンネルトランジスタのオン電流は現在のトランジスタよりも1桁以上低いため、IoT(モノのインターネット)くらいしか用途がない」(同氏)という。
また、スピントロニクスは論理回路の作製に全く新しいツールが必要となるため、現実的な技術とはいえない。Hu氏は、「われわれの設計インフラは非常に高額であるため、全く異なるコンセプトを導入したトランジスタを製造するのは非常に難しい」と述べている。
SynopsysのCEOを務めるAart de Geus氏は、EE Timesによる短いインタビューの中で、半導体業界の年間売上高の年平均成長率(CAGR)が4.4%で、2015年と2016年の成長率は限りなくゼロに近いことを指摘し、「半導体業界は今、新たな設計手法が求められる困難な時代を迎えている。半導体の製造コストの上昇に対応するために半導体企業が合併すると、設計の開始時期が遅れたりEDAの販売が横ばい状態になったりすることは避けられない」と語った。
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