大いなるタブーなのか――人身事故を真面目に検証する:世界を「数字」で回してみよう 人身事故(29)(7/8 ページ)
電車を日常的な移動手段にしている者にとって、疲れ果てている時、急いでいる時に発生した人身事故ほど、心が疲弊するものはありません。ですが、声を大にして人身事故を批判することはタブーである、という暗黙の了解が、なぜか存在するのです。今回から始まる新シリーズでは、この「(電車での)人身事故」について、「感情的に」ではなく「数学的に」検証したいと思います。
誰が人身事故を発生させているのか
そこで今度は、各年代が「どの方法で自殺を選んでいるのか」を調べてみました(第1-29図 平成26年における男女別・年齢階級別(10歳階級)・自殺の手段別の自殺者数の構成割合)
まず、最もポピュラーである「首つり」の傾向を見てみましょう。
さすがに、年間全自殺数の65%を占めるだけあり、どの世代からも選ばれている様子が伺えます。
これに対して「飛び込み」自殺では、以下のようになりました。
このように「飛び込み」自殺は、若者や女性に好まれる傾向があることが分かります。
ただし、気を付けていただきたいのは、この情報を見るだけでは、まるで「飛び込み」自殺を若者や女性がけん引しているように見えることです。しかし、それは大間違いなのです。
前述した通り、男性の自殺率は女性の2倍以上ですし、そして、私も今回調べるまで知らなかったのですが、実は、ティーンエージャーの自殺者数は、驚くほど少ないのです。
それでは、一体誰が「自殺大国日本」をけん引しているのか?
わが国を現在進行形でリードしている、私たちの世代(40〜60歳)なのです。
この話は、まだまだ続くので、このお話は次回の続きとさせて頂きたいと思います。
では、今回の内容をまとめます。
【1】「人身事故」に腹を立てている江端が、「人身事故」の全体像を理解することを目的として、今回から新シリーズ、「人身事故を「数字」で回してみよう」を開始しました
【2】日本の年間自殺者数「3万人(現在は2.4万人)」の数字の意味を求めて、各国の自殺率との比較を行い、その結果として、「今後、日本は世界第1位の自殺大国になるポテンシャルが、十分にある」との所感を得ました
【3】人身事故(「飛び込み」自殺)の年間統計数、長期トレンドを分析して、「飛び込み」自殺が、他の自殺と異なるトレンド(発生時期のズレや、若者や女性が好む傾向等)があることを、数字で明らかにしました
私は今回の連載において、今のところ、自殺の是非の問いかけや、自殺を回避する提言、生きることの意義、国の自殺対策の批判などを、展開する予定はありません。また、「世の中を明るくしよう」とか「人生を有意義に生きよう」などと主張する気持ちは、1pm(ピコメートル、10のマイナス12乗、1兆分の1メートル)足りともありません。
そんなことは、私にとってはどーでもいいことです。
この連載は、私が日常的にむりやり遭遇させられる「人身事故」という現象を、数字という1つの手段を用いて、(もっぱら私自身が)納得することのみを目的としております。
なにしろ、私、江端智一は、EE Times Japan編集部から「数字を回すのであれば、何を書いてもいい」とお墨付きをもらっているエンジニアですから。
それでは皆さん、連載新シリーズ、「人身事故を「数字」で回してみよう」をよろしくお願い致します。
(1)電車の人身事故について、2問だけのアンケートを実施中です。
- 電車の人身事故に腹が立ったことはありますか?
- 何に対して腹が立ちますか?
所要時間は5秒程度でした(実測済み)。ご協力の程、よろしくお願い致します。⇒アンケートはこちらから
(2)本連載について、メールで、簡単なアンケートなどに応じていただける方を募集しております。
こちらのメールアドレス(one-under@kobore.net)に『アンケートに応じます』とだけ書いたメールを送付頂くだけで結構です(お名前、自己紹介等は必要ありません)。
これまで、「人工生殖」「ダイエット」について、延べ50人の方から貴重なご意見を頂いて参りました。
こちらも、何卒ご協力いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.