カップ1つ作るのに、ご主人様とメイドは4000回会話する:江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(10)(4/8 ページ)
産業用ネットワーク「EtherCAT」の世界を「ご主人様」と「メイド」で説明し続けてきた本連載。今回からは最終章と題し、EtherCATを開発したベッコフとEtherCAT Technology Groupの方々へのインタビューの様子を紹介していきます。今回は、EtherCATを使って感じた不満、疑問を遠慮なく、ぶつけてみました。
Q:EtherCATなんて、「しょせん新参者だ」ってディスられていますよ
川野さん 誰がディスっているか、大体想像はつきますので、江端さんにはお伺いしませんが……
と、前置きして、川野さんは続けられました。
川野さん イーサネットベースの制御LANがスタートしたのが2000年頃です。EtherCATは2003年。スタートにおいて、せいぜい3年くらいの差しかありません。仮に「イーサネット」の枠を外したとしても、制御LANの汎用製品化のスタートが1990年くらいですから、10年ちょっとくらいの差しかありません。これって「年季」って言いますかね?
江端 でも、私、検索エンジンで調べてみたんですが、EtherCATのアプリケーション(応用事例)って、全然ヒットしませんでしたよ。
川野さん 江端さん。日本語で検索したでしょう?
はっはっは、実は、その通り。なにしろ、私、「英語に愛されないエンジニア」ですから。
川野さん アプリケーション事例が少ないというのは、誤解です。ここから見てください。
といいつつ、川野さんは、こちらのWebサイト[URL:https://www.ethercat.org/jp/downloads.html]を紹介してくださいました。
ここには、ずらりとさまざまな分野の事例が紹介されていました。
川野さん EtherCATのアプリケーションが少ないとディスられている理由は、これらのニュース記事の翻訳が遅れているのが原因の1つ。それと日本では、なかなかEtherCATを使った事例の開示にご同意いただけないという理由もあります。
江端 ああ、分かります。『同業他社に内情を知られなくない』という気持ちは理解できます。優位技術であれば、他社にマネされたくないですからね*6)。
*6)川野さんより補足:「ご開示いただいている会社もあります」(参考記事)
川野さん ある団体のスレーブでは、「ネットワークが切断されても0.2秒で別ルートへの切り替えができる」との自慢コメントがあるようですが、正直、このコメントの意味が分かりません。
江端 それは、故障時にもノンストップで運用を続けられるという意味だと……
川野さん そういうことではなく、EtherCATで冗長ネットワークを構築した場合、切断時の切り替え時間は1ミリ秒未満にすることが可能です(0.2秒の1000倍以上も速い)。江端さんが、何か質問内容の意味を取り違えたか、あるいは解答された方が「何か勘違いされている」という可能性はありませんか?
そうかもしれない。今となっては、確認しようもないのですが「1000倍」では、そもそも勝負になりませんから。
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