カップ1つ作るのに、ご主人様とメイドは4000回会話する:江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(10)(5/8 ページ)
産業用ネットワーク「EtherCAT」の世界を「ご主人様」と「メイド」で説明し続けてきた本連載。今回からは最終章と題し、EtherCATを開発したベッコフとEtherCAT Technology Groupの方々へのインタビューの様子を紹介していきます。今回は、EtherCATを使って感じた不満、疑問を遠慮なく、ぶつけてみました。
Q:EtherCATの超高速は、「無駄に高速なだけで、現場では、そんな高速性は、全く必要とされていない」って言われましたよ
江端 EtherCATの「無駄な超高速」の話は、どこの団体からもよく聞かされました。
「その質問、待っていました」とばかりに、川野さんは、あるEtherCATのアプリケーションの紹介を始められました。
川野さん 江端さん。高圧成形ってご存じですか? 簡単にいうと、プリンやヨーグルトのカップを作る手法で、その中でも高温のプラスチックを溶かしながら型に流し込むものは、射出成形加工といわれています*7)。
*7)2014年での日本のプラスチック加工機械の生産台数は約1万4千台(出典:http://www.a-jpm.jp/jpn/statistics/index.html)
江端 はぁ
全然、知らない。
川野さん ヨーグルトのカップとはいえ、輸送や陳列、ユーザーの運搬を考えれば、当然一定の強度が必要になるのは分かりますよね。
江端 そうですねえ。少なくとも私は、ヨーグルトやプリンのケースが割れて、内容物が流れ出したという経験はしたことはないです
と、言いつつ、正直、興味がない。
川野さん 一定の強度を維持するためには、一定量のプラスチックの原料が適正に使用されなければなりません。ですから、原材料(プラスチック)の減量によるコスト軽減は困難だと、一般的には考えられています
江端 はぁ
形成加工技術の知識ゼロ。
川野さん ところが、原料のプラスチックの量を減らして年間2000万円の経費削減を実現した会社があるのです。
その話を聞いて、私は一気に目が覚めました。
下町の小さな木工会社の社長の長男だった私は、ヨーグルトのカップのような量産型の薄利多売の商売において、原料費の削減がどれほど難しいことであるかを、よく理解していたからです。
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