検索
ニュース

線幅0.8μmを実現する新原理の印刷技術を開発折り曲げても割れにくいタッチパネルが可能に(1/2 ページ)

産業技術総合研究所(産総研)の山田寿一主任研究員らは、東京大学や山形大学、田中貴金属工業と共同で、線幅0.8μmの微細な電子回路を簡便に印刷できる技術を開発した。フレキシブルなタッチパネルセンサーなどへの応用を進めている。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 産業技術総合研究所(産総研)フレキシブルエレクトロニクス研究センターの主任研究員を務める山田寿一氏(現在は窒化物半導体先進デバイスオープンイノベーションラボラトリ ラボ研究主幹)、及び総括研究主幹で東京大学大学院工学系研究科教授を兼務する長谷川達生氏らは2016年4月、東京大学や山形大学、田中貴金属工業と共同で、線幅0.8μmの微細な電子回路を簡便に印刷できる技術を開発したと発表した。

 産総研は、プリンテッドエレクトロニクスの実現に向けて、幅広い研究を行っている。例えば、インクを塗布する基材の表面改質技術を活用した半導体層/強誘電体層の印刷技術などである。また、山形大学が開発し、田中貴金属工業が製品化に取り組む特殊な銀ナノインクを研究に用いることで、基板表面上に銀ナノ粒子が選択的に化学吸着して、粒子同士が融着する現象などを見出してきた。


プリンテッドエレクトロニクス技術を用いて開発したフレキシブル基板の例 出典:産総研

 共同研究チームは、これまでの研究成果を踏まえて、さまざまな現象の解析とそれに基づく新たな印刷技術の開発を行ってきた。今回開発したのは、「スーパーナップ(SuPR-NaP:表面光反応性ナノメタル印刷)法」と呼ばれる新原理の印刷技術である。紫外光照射でパターニングし、銀ナノ粒子を高濃度に含む銀ナノインクを表面コーティングするだけで、高精細の銀配線パターンを製造することができるという。

 新開発のスーパーナップ法を用いて金属配線を行う印刷製造プロセスの主な工程は、「紫外光のマスク露光」「反応性表面の潜像形成」「銀ナノインクのブレードコーティング」及び「銀配線パターンの形成」に分けることができる。まず、基材表面上に形成した非晶性のフッ素系ポリマーの薄層上に、フォトマスクを通して波長172nmの紫外光を照射し、パターニングを行った。この作業により、銀ナノ粒子を化学吸着する活性の高い表面(反応性表面)パターンの潜像が得られた。続いて、銀ナノインクで濡らしたブレードを用いて、基材表面の全面を掃引した。これにより、銀ナノ粒子は反応性表面上だけ選択的に吸着し、銀ナノ粒子同士が自己融着し、銀配線パターンが得られたという。


スーパーナップ法を用いた印刷製造プロセスの主な工程 出典:産総研

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る