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太陽電池、これまで10年これから10年(中編)インドとドイツの現状にみる(1/5 ページ)

燃料を必要としない発電技術として、太陽電池に期待が掛かっている。火力発電を置き換えるという目標達成も見えてきた。発展途上国では発電所の増設時に、石炭火力と並ぶ選択肢となった。今回はインドとドイツの現状から、太陽電池の今を伝える。

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 発電量世界第3位の国で、電気が足りない(図1)。年間発電量が年間需要に対して3.6%不足……。これは東日本大震災に見舞われた日本の話ではない。2013年時点のインドの状況だ。

 インドの実質経済成長率は2014年時点で年7.4%と高い。1990年代から高い経済成長が続いてきたものの、依然、1人当たり国民総所得は日本の30分の1という水準にある。インド政府は今後も経済成長率を維持しようと努力している。

 足を引っ張るのは電力不足だ。電力需要の増加のペースに発電所の増設が追い付いていない。政府は計画的に石炭火力発電所を立ち上げているものの、大都市部でも停電が頻発し、無電化地域も残っている*1)

*1) 2012年時点で人口の25%、約3億人。


図1 宇宙から観測した夜間のアジア 電力消費量で世界第3位のインド(左)、第1位の中国(中央)、第5位の日本(右)が明るく写っている。おおよその範囲を図中の右下に示した。出典:NASAの公開画像を合成

石炭火力に頼り切れない

 インドには豊富な石炭がある。埋蔵量は世界第3位と多く、同国の2012年の採掘量(約5.6億トン)を今後100年間まかなうことが可能だ。2015年時点で採掘量は世界第2位。現在はより安価な輸入石炭にも手を伸ばしており、2015年には輸入量が2億トンを初めて超えた。

 インドの発電は化石燃料、それも石炭に頼っている。インド電力省によると、2015年12月31日時点の総発電容量は284GW。そのうち61%を石炭が、15%を大規模水力(出力15MW超)が、9%を天然ガスが占めている。

 ただし、今後は石炭火力の増強ペースをいくぶん落とさなければならなくなってきた。インドの大気汚染(PM2.5)は中国を上回って世界最悪の水準*2)にあり、二酸化炭素排出量は既に世界第3位だ。

 インド中央政府は2017年までに石炭火力発電用の石炭輸入量をゼロにする政策を打ち出している(国内炭は利用する)。実際に発電用石炭の量は2015夏ごろから一貫して減少している。

*2) 150μg/m3を超える。PM2.5の全てが石炭の燃焼によるものではない。例えば、インドでは人口の66%(2012年)が屋内調理用のエネルギーに伝統的なバイオマス(例えば薪)を利用している。

実は石炭火力は最安ではない

 石炭火力の問題は環境破壊以外にもう1つある。実はそれほど安価ではないのだ。

 石炭などを用いた火力、水力、原子力、さまざまな再生可能エネルギー。これらの発電方式のうち、どれが最も安価な電力を生み出すことができるのか。

 実は国ごとに順番が変わる。インドについては大規模な調査がないものの、IEA(国際エネルギー機関)とNEA(原子力機関)の分析が参考になる*3)。巨大な人口、急速な工業化、石炭の埋蔵量と輸入量という複数の点でインドと似ている中国のデータだ。

 中国で新規に発電所を建造した場合、発電コストが最も低いのは大規模水力(図2)。次いで原子力、風力、太陽光、石炭、ガスタービンの順になる。太陽光発電の発電コストは既に石炭の75%という低い水準にある。

*3)「Projected Costs of Generating Electricity 2015 Edition」から、均等化発電原価(LCOE)の値を比較した。LCOEとは、発電所の設計、建設から運営、廃止までの全てのコストを、生涯発電量で割った値だ。超々臨界圧石炭火力発電のLCOEは73.61米ドル/MWh(7.361米セント/kWh)、大規模太陽光は54.84米ドル/MWh。なお、図中にあるdiscount rate(割引率)とは、将来価値を現在価値に換算する際に用いる数値。


図2 中国の発電コスト discount rateが3%の場合 出典:IEA、NEA

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