太陽電池、これまで10年これから10年(中編):インドとドイツの現状にみる(2/5 ページ)
燃料を必要としない発電技術として、太陽電池に期待が掛かっている。火力発電を置き換えるという目標達成も見えてきた。発展途上国では発電所の増設時に、石炭火力と並ぶ選択肢となった。今回はインドとドイツの現状から、太陽電池の今を伝える。
太陽光発電に軸足を移す
中国のコストデータを見る限り、太陽光発電などの再生可能エネルギーで石炭をいくぶん代替できそうだ。インド中央政府は、2022年までにさまざまな再生可能エネルギーを利用して170GWの発電能力を得る計画を打ち出した。2030年には非化石燃料の電源構成比を40%まで引き上げるという目標もある。
2014年までに立ち上がった太陽光発電の規模は約3GW(図3)。これを2022年までに100GWまで伸ばす。いわゆる大規模太陽光発電所で60GW、住宅の屋根などで40GWだ。これらの太陽光発電設備がインドの気象条件下で稼働した場合、インドの全発電量の10.5%(約1000億kWh)を担う計算になるという。インドの大手太陽光発電企業であるVikram Solaraが発表したIndia solar handbook 2015によれば、今後3年でインドを世界最大の太陽光市場の1つに育てる目標があるのだという。
大規模太陽光発電所でコスト低減始まる
中央政府の政策は29の州政府にも降りてきている(図4)*4)。導入量ではラージャスターン州のように期限を定めず2.5GWもの導入量をうたう州がある一方、2017年から2030年の期限を付けて、導入を促す州もある。
*4) 図4で興味深いのは左下にあるラクシャディープ諸島(Lakshadweep)だ。30程度のサンゴ礁からなる諸島であるものの、150MWの新規導入を目指している。
このような旺盛な需要に、太陽光発電事業者が応える状況が始まっている。それも発電コストを保証した形でだ。
例えば、アンドラ・プラデュ(Andhra Pradesh)州カルヌール地方に立地する出力350MWの太陽光発電プロジェクトGhani Sakunala Solar Parkだ*5)。図4では右下に描かれており、2019年までに5GWの累積導入量を計画していることが分かる。
ソフトバンクグループとバーティ・エンタープライゼズ・リミティッド、フォックスコン・テクノロジー・グループの3社は合弁会社SB Energyを設立してプロジェクトに応札。運用期間25年の期間中4.63ルピー/kWh(約9.12円/kWh)の売電価格を維持するという条件で2015年12月に落札したことを発表した。石炭火力の発電コストと競合可能な水準にあるといえるだろう。
インドの新規プロジェクトではこの4.63ルピーという価格が「基準」になりつつある。同州のプロジェクト以外にも複数の事例でこの価格で太陽光発電事業が成立しているからだ。
*5) 2015年末時点で稼働している日本国内最大の太陽光発電所の出力は115MWである(関連記事)。
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