毎秒56Gビットの無線伝送、CMOS回路で実現:ワイヤレスジャパン/WTP 2016
富士通は、「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2016」で、富士通研究所と東京工業大学が開発した、毎秒56Gビットの無線伝送を可能とするCMOS無線送受信チップとそのモジュール技術を紹介した。
富士通は、「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2016」(2016年5月25〜27日、東京ビッグサイト)で、富士通研究所と東京工業大学が開発した、毎秒56Gビットの無線伝送を可能とするCMOS無線送受信チップとそのモジュール技術を紹介した。
開発したCMOS無線送受信チップは、データ信号を2つに分けて、それぞれ異なる周波数帯に変換してから混合することで、送受信回路を広帯域化、低損失化する技術を用いた。具体的には、低い帯域の信号は72〜82GHz、高い帯域の信号89〜99GHzに分けた。これをそれぞれ10GHz幅ごとに変復調を行う。この技術を用いることで、20GHz帯域幅の信号も高品質で伝送することを可能にしたという。
ミリ波帯の信号を電波で送受信するための増幅器も開発した。増幅率は周波数によって部分的に低下する信号成分がある。これに対して、出力信号の振幅を入力側へフィードバックして増幅率を安定化させる回路技術を開発。72〜100GHzと極めて帯域が広い増幅器を実現できたという。「半導体チップは65nmCMOSプロセス技術を用いて製造した」(説明員)と話す。
ミリ波帯通信などに用いる半導体チップは、実装するためのモジュール技術が伝送特性などに大きく左右する。富士通研究所は、プリント配線板上の配線パターンを工夫することで、インピーダンスマッチングさせた導波管と基板とのインタフェースを開発し、大幅な損失低減を図った。
富士通研究所では、試作した2台のモジュールを10cmの距離で対向させて設置し、データ伝送試験を行った。導波管と基板の間の損失を10%以下に抑え、毎秒56Gビットのデータ転送に成功したという。
今回開発した技術は、光ファイバー通信網を補完する技術と位置付けている。光ファイバーの敷設が困難な用途/地域において、大容量無線通信を実現していく。毎秒56Gビットの無線伝送容量があれば、8Kの超高精細映像を非圧縮かつ、リアルタイムに無線伝送することが可能だという。
同社では、2020年ごろの実用化を目指している。今後は、伝搬距離を伸ばすために出力が1W級のパワーアンプ開発なども併せて行っていく計画だ。
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