レーザー走査型車載HUD向けドライバーIC:750mA×4chで高強度レーザーを発振可能(2/2 ページ)
インターシルは2016年6月1日、レーザー走査型の車載ヘッドアップディスプレイ(HUD)システム向けに4つのレーザーダイオードを駆動できるドライバーIC「ISL78365」を発表した。
ダイナミックパワーマネジメント機能
レーザーダイオードの長寿命化、HUDシステムの消費電力化に向けて、レーザーダイオード電源の供給電圧を最適化するダイナミックパワーマネジメント(DPM)機能を搭載した。
レーザーダイオードを駆動するためドライバーICは、レーザーダイオード電源からレーザーダイオードに供給された後の電力供給を受けるが、その際の電力の電圧は、1V程度必要になる。そのため、レーザーダイオード電源は、レーザーダイオードの順方向電圧+1V程度の電圧の電源を供給する。しかし周囲温度などにより、電源電圧やレーザーダイオードの順方向電圧が大きく振れ、ドライバーICが必要とする1V程度の電圧を大きく上回る電圧が供給され、損失/熱となるケースが多くある。そこで、DPM機能は、供給される電圧値が、あらかじめ決めたしきい値を上回った(または下回った)との情報をレーザーダイオード電源にフィードバックし、損失の少ない最適な電源電圧に調整する機能だ。「これまでも、ドライバーICは、電圧をモニタリングしていたが、フィードバック機能は搭載しておらず、ディスクリート部品などで外付け回路を構成し、対応する場合が多かった。ISL78365ではそうした手間なく、消費電力や熱の発生を抑えられるレーザーダイオード電源電圧の最適化が図れる」とする。
スペックルノイズも抑制
さらに、ISL78365は、画質向上に向けて、スペックルノイズと呼ばれるぎらつきの発生を抑えるマルチパルスRTZ(Return to Zero)機能を搭載した。同機能は、レーザーの発光を促すパルスは、通常1画素当たり1パルスとなるが、同機能では、1画素当たり2パルスとして「20%程度、スペックルノイズを抑えるレーザー駆動を実現した」としている。
CD、DVDの光ピックアップ向けノウハウを応用
競合製品の2倍程度となる駆動電流や、高速駆動、DPM機能、マルチパルスRTZ機能などを実現できた要因としてインターシルは「レーザーダイオードドライバーIC技術は、CDやDVDの光ピックアップ用レーザーのドライバーICで多くの実績を有したエランテック(Elantic/2002年に買収)の技術をベース。CDやDVD向けに培った技術を応用することで、競合を上回る独自性の強い車載HUDシステム向け製品を実現できた」としている。
ISL78365は、6mm角サイズの40ピンWFQFNパッケージを採用し、価格は9.82米ドル(1000個購入時)。既に量産を開始しているという。
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