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20年論争決着、磁性半導体の強磁性示す仕組み解明新たなスピントロニクス素子の開発を加速か(1/2 ページ)

東北大学らの研究グループは、磁性半導体の(Ga,Mn)Asが強磁性を示すメカニズムを解明した。新たなスピントロニクス素子の開発を加速させるものとみられている。

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磁性半導体の(Ga,Mn)As

 東北大学らの研究グループは2016年6月、磁性半導体の(Ga,Mn)Asが強磁性を示すメカニズムを解明したと発表した。今回の成果は、新たなスピントロニクス素子の開発を加速させるものと期待される。

 今回の成果は、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)の相馬清吾准教授、高橋隆教授(兼理学研究科)、松倉文藎教授、Tomasz Dietl教授、大野英男教授(兼電気通信研究所、省エネルギー・スピントロニクス集積化システムセンター)、及び同理学研究科の佐藤宇史准教授らの研究グループによるものである。

 磁性半導体である(Ga,Mn)As(ガリウムマンガンヒ素)は、GaAs(ガリウムヒ素)のGa原子の位置に、磁性不純物であるMnを高濃度で注入することで得られる物質であり、半導体と磁性体の特質を併せ持つ。電気で磁性の制御を実現したことから、スピントロニクス素子の基盤技術構築に貢献してきた。しかし、(Ga,Mn)Asが強磁性を示すメカニズムについてはこれまで明確になっていなかった。


(Ga,Mn)Asの結晶構造 出典:東北大学

「p-dツェナーモデル」か、「不純物モデル」か、

 そのメカニズムについて現在は、「p-dツェナーモデル」と「不純物モデル」と呼ばれる、異なる2つの見解が示されている。両モデルともホールキャリアの媒介でMnの電子スピンの自発的な整列が促される点は共通しているものの、ホールの性質は異なるという。


角度分解光電子分光の概念図 出典:東北大学

 研究グループでは今回、外部光電効果を利用する光電子分光という手法を用いた。この手法で、(Ga,Mn)Asの電子状態を高い精度で決定し、電子の不足状態である「ホールキャリア」が、As結合軌道とMn不純物軌道のどちらにあるのかを調べた。この実験では、薄膜試料を作製する分子線エピタキシー装置から試料を一度も大気に出さずに、常時超高真空環境にある高分解能光電子分光装置に移送した。(Ga,Mn)As試料の汚染を避けることで、(Ga,Mn)As本来の電子状態の観測することに成功したという。

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