パナが成長の「キモ」とするAI、人材育成も強化へ:東大で8社による寄付講座を開始
東京大学は2016年6月、パナソニックなど8社による9億円の寄付で、大学院理工学系研究科知能機械情報学専攻に「先端人工知能学教育寄付講座」を設置すると発表した。寄付講座を開始する狙いについて、パナソニック技術戦略部でソフトウェア戦略担当理事を務める梶本一夫氏に話を聞いた。
8社による9億円の寄付で人材育成を強化
東京大学は2016年6月、大学院理工学系研究科知能機械情報学専攻に「先端人工知能学教育寄付講座」を設置すると発表した。同講座は、トヨタ、ドワンゴ、オムロン、パナソニック、野村総合研究所、ディー・エヌ・エー、みずほフィナンシャルグループ、三菱重工業から9億円の寄付で実現。2021年5月31日までの5年計画で活動を開始する。
具体的には、1)先端人工知能手法とその理論および応用に関する講義、2)対外連携活動、3)基礎研究を実施していく。2016年4月から大学院講義「先端人工知能論I」を開講しており、2016年度後半には「先端人工知能論II」の開講も予定している。カリキュラムの拡大も予定しており、深層学習を含む先端人工知能技術とその理論基盤に関する体系的教育プログラムの構築と実施による人材育成を目指すとした。
今回の寄付講座開設の狙いについて、パナソニック技術戦略部でソフトウェア戦略担当理事を務める梶本一夫氏に話を聞いた。梶本氏はまず「人工知能(AI)技術は、パナソニックがこれから成長していくための“キモ”という認識でいる」と語る。
しかし、AI技術において同社は後発だ。そのため、人員の強化が求められており、今回の寄付講座開設も長期的にみた人員強化策の1つという。自動車分野などへの応用に向けて、ディープラーニング技術で注目を集めるベンチャー企業のPreferred Networksと事業提携を行うといったオープンイノベーションも進めている。
「AI分野は業界全体として人材が足りていない。社内のソフトウェア人材のマインドセットを切り替えながら、外から人材を育てるのも進める」(梶本氏)
「パナソニックラボラトリー東京」を開設
パナソニックの研究開発の方向性と取り組み内容を紹介する「技術10年ビジョン」の「IoT/ロボティクス領域」でも、AIは注力する分野の1つとして挙げられている。具体的には、人を家事から解放することを目指す「AIロボティクス家電」や多言語音声翻訳などで実現する「店舗・接客ソリューション」、事故や渋滞ゼロを目指す「自動運転・コミュータ」、労働不足の解消を目指す「次世代物流・搬送」分野でAIを活用するという。
また、2016年4月には研究施設「パナソニックラボラトリー東京」(東京都江東区)を開設。人の生活に役立つ技術を意味する“ヒトティクス研究所”をコンセプトに、AIやIoT、ロボティクスなどの分野におけるハブとなる研究施設を目指していく。
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