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「江バ電」で人身事故をシミュレーションしてみた世界を「数字」で回してみよう(31) 人身事故(2/9 ページ)

1回の人身事故の損害が、とにかく「巨額」であることは、皆さんご存じだと思います。では、おおよそどれくらいの金額になるのでしょうか。そのイメージをつかむため、仮想の鉄道「江バ電」を走らせ、人身事故をシミュレーションしてみました。

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「死」に関する語彙だけで50種類超! 日本人の死生観

 今回の連載を開始する前に、私は、日本人の「生死観」ではなく「死観」をいろいろと調べてみました。その話は、この連載のスコープ外なので語りませんが、1つの例をご紹介しておきます。

 日本は「自殺」の表現を、細分化、体系化することに関して、世界でもめずらしい国のようです。

 世界各国の「自殺」の表現を調べてみると、

  • フランス語ではle syucude(名詞)、se suicider、se tuer(動詞)、se suoorimer(自己を抹殺する)、se detruire(自己を破壊する)、se defaire(自己を打ち破る)など
  • ドイツ語ではselbstmord(自身の殺害)、Lebensmuder(人生に疲れた人)、Freitod(自由な死)など
  • 英語では、suiside(自殺)、self-muder、self-killer(自己殺人)、self-destrction(自己破壊)など

があります。

 もっとも、現在の英語の辞典では、もっといろいろな表現は出てきますが、これは日本の文学やメディアの影響を受けて、新しく追加された表現(ハラキリなど)のようです。

 一方、日本では――

自殺、自決、自害、自裁、自滅、殉死、追腹、情死、焼身、失恋死、厭世死、抗議死、無念腹、諫死、粗忽死、切腹、自刃、割腹、屠腹、詰腹、扇子腹、水腹、手腹、介錯、入水死、身投げ、投身、縊死、首縊り、首吊り、飛び込み、飛び降り、服毒、ガス、自爆、拳銃自殺、心中、後追い、無理心中、一家心中、差し違え、玉砕、人身御供、人柱、殉国、決死、特攻、死に花、狂言、自殺未遂、死に損ない ―― ここまでで、52種類。

 今回、これらの用語の全てをGoogle翻訳先生に翻訳してもらったのですが、―― おおむね、その翻訳結果は間違ってはいないんですが ―― 正直言って、何か違う

  • 「自決」→"Self-determination" は、「自己決定」という肯定的な意味で解釈されているし
  • 「介錯」→"Suicide assistant"も、間違っていないけど、違和感を覚えるし
  • 「後追い自殺」→"Follow-up suicide"に至っては、「『自殺』のフォローアップ」みたいに読めます(怖い)
  • 「失恋死」「厭世死」「抗議死」は、それぞれ"Heartbreak death""Misanthropy death""Protest death" と「形容詞+名詞」の形になっているだけだし
  • 「追腹」→"Oibara"、「詰腹」→"Tsumebara"、「扇子腹」→"Fan belly"、「水腹」→"Mizubara"、「手腹」→"Tehara"、「首縊り」→"Kubikukuri"、「差し違え」→"Sashichigae"、「狂言」→"Kyogen"に至っては、Google翻訳先生は、もう意味を考えることを諦めて、単に読み上げているだけみたいだし
  • 「情死」→"double love suicide"、「決死」→"Desperate"、「死に損ない」→"Mortals"に至っては、完全な誤訳でしょう

 しかし、私は、Google翻訳先生を責める気持ちにはなれないのですよ。

 そもそも、「死」というのは、単なるオブジェクトの状態に過ぎません。その状態をさらに詳しく表現したいのであれば「手段、状態」の形容詞+「死」という複合名詞だけで、十分に表現できるはずです。

 しかし、私たち日本人の多くが、これらの用語の微妙なニュアンスを理解し、そして日常的に使い分けることができます。

 これが、冒頭で説明した「日本人固有の思想のプラットフォーム」なのでしょう。

 そして、私たちは、その「死」の用語の使い方を間違えると、とんでもない批判にさらされ、社会的な制裁を食らうことも、よく知っています。

 日本の中にいると見えてこないのですが、こうして世界を比較してみると、確かに、日本という国は、こと「死」に関しては、なかなか興味深い「日本人固有の思想のプラットフォーム」を持っているようです。

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