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「江バ電」で人身事故をシミュレーションしてみた世界を「数字」で回してみよう(31) 人身事故(4/9 ページ)

1回の人身事故の損害が、とにかく「巨額」であることは、皆さんご存じだと思います。では、おおよそどれくらいの金額になるのでしょうか。そのイメージをつかむため、仮想の鉄道「江バ電」を走らせ、人身事故をシミュレーションしてみました。

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あの大地震後、人身事故がピタリとなくなった

 では、ここで一度、話を元に戻します。

 2011年3月11日の、あの大地震の恐怖は今でも忘れられません。私は、横浜のオフィスの床にはいつくばって、永遠とも思われえるような激しい揺れの中で、恐怖におびえていました。その恐怖は、原子炉格納庫の爆発映像でピークを迎えるのです(参考)が、それはさておき。

 あの日から、鉄道での人身事故がピタリとなくなりました。

 来る日も来る日も、列車が定刻通りにやってきて、気持ち悪いくらい ―― そんな感じだったことを、よく覚えています。

 そこで私は、2011年の飛び込み自殺者数が激減したのは、3・11震災と災厄(災害救助、原発事故)によって、太平洋戦争前または戦争中のような、国民の団結感が発生したためである、という仮説を上げてみました。

 この仮説の検証は、簡単だと思っていました。そんなデータはすぐにでも出てくるだろうと思っていたからです。

 ところが、この仮説を裏づけるデータが、どこを、どうひっくり返しても、出てこないのです。

 国土交通省の鉄道事故のデータや、全国鉄道人身事故ランキングなどのデータから、2011年を中心として、鉄道の人身事故の事故件数を積み上げてみました。

 しかし、2011年だけ特別に鉄道の人身事故が減っている、という根拠となるべき数値を見つけだすことができませんでした。

 そして、私のこの仮説にとどめを刺したのは、以下のグラフでした。

 わが国の年間自殺者数は、2008年から順調に減り続けているのですが、「飛び込み自殺者数」だけが減少していない ―― 停滞し続けているのです。それどころか、震災後にわずかながら増加しています。日本全体の自殺者数が減っているのにもかかわらず、です。

 ―― 3・11震災後も、鉄道の人身事故だけが減ってない

 ここに『太平洋戦争時の自殺率をケーススタディーとして、3・11震災後の鉄道への飛び込み自殺者数の減少を説明できる』とする私の仮説は、真逆の事実を突き付けられて、ガラガラと音を立てて崩れ去ったのです。

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