AI搭載の協調ロボットが工場の自動化に貢献
「Tend.ai」は人工知能(AI)を搭載する協調ロボット(人と一緒に働くロボット)だ。3Dプリンタ、プリント回路基板(PCB)用のインサーキットテスター(ICT)、パンチプレスをはじめとする自動製造装置をサポートする協調ロボットとしては世界初だといわれている。専門知識がないユーザーでも操作できるよう、クラウドベースのソフトウェアで動くオートメーションシステムを提供することで、米国に製造拠点を呼び戻すのが狙いである。
Tend.aiのクラウド上のAIソフトウェアは、アームに取り付けたWebカメラおよびユーザーが端末を接続するシンクライアントを使い、労働者が手動で行わなくてはならない全ての作業を管理する。
具体的には、装置を設定したり、ボタンを押したり、部分的に組み立てられたデバイスを装置から装置に移したり、完成した製品を箱詰めしたりといった作業が可能だ。
Tend.aiの事業を手掛ける米国Bold RoboticsでCEO(最高経営責任者)を務めるMark Silliman氏は、EE Timesによる独占インタビューの中で、「完全に自動化した工場を作ることで、製造拠点を米国に呼び戻すことができる」と主張する。原動力となるのは“マスプロダクション(大量生産)”から“マスカスタマイゼーション(大量カスタマイズ)”への移行だ。マスカスタマイゼーションに移行すれば、製品を中国からはるばる運ぶことなく、受注から2日後には納品できる体制を実現できるだろう」と述べた。
ガレージから生まれたアイデア
Silliman氏は、このようなアイデアを、カスタマイズのクッキーカッターをガレージで製造していた起業家仲間から得たという。
Silliman氏はそのガレージで、その起業家が、3Dプリンタから完成部品を取り出したり、次の作業の準備をしたりするために、絶えず行ったり来たりしている様子を見ていた。そしてSilliman氏は、工場を完全に自動化するためには、従来のCNC(コンピュータ数値制御)工作機械やパンチプレス、カッター、PCB用ICTでもロボットのサポートが必要だと気付いたのである。ちなみに、Silliman氏は、Tend.aiの設立資金をエンジェル投資家から調達している。
今や協調ロボットは、人間を傷つける危険を冒さずに人間と並んで働けるようになった。
Silliman氏はEE Timesに対し、「従来は、ロボットアームで従業員がけがなどしないように、アームを囲う必要があった。協調ロボットは、そのような風景を一変した。2015年には協調ロボットメーカーはわずか3社だったが、現在では少なくとも7社に増えている」と語った。
「The Robot Report」の発行人兼編集者であるFrank Tobe氏は、協調ロボットビジネスが盛んになりつつあるというSilliman氏の主張について、少なくとも同ビジネスに参入している新興企業の数という点では賛同できるとした。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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