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“人の目を超える”、UWBを使った3Dセンサー乳がん検査向けから開発が始まった(2/3 ページ)

イスラエルのVayyar Imagingが開発した「3Dセンサー技術」は、超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)無線周波数を利用して、対象物を画像化するものだ。乳がんの検査用に開発されたこの技術は、ガス管の検査からセキュリティチェック、高齢者の見守り、食品の組成検査まで幅広い分野に応用できる可能性がある。

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1億円の検査装置が100万円レベルに

 デジタルマンモグラフィー装置の価格帯は数百万円〜1億円だが、Familier氏は「3Dセンサー技術を用いた乳がん検査システムは、1万米ドル(約100万円)を想定している」と述べる。「コストが低いだけでなく、マンモグラフィーに比べて、X線を使わない、専門の技師が不要、痛みがないといった利点がある」(同氏)

Vayyarは米国ラスベガスで開催された「2016 International CES」で、「3Dセンサー技術」を使った乳がん検査システムのデモを披露した。左は女性の乳房の模型で、説明員が指で示している黒い点を腫瘍と見立てている。右は、センサーで捉えた映像。腫瘍の位置と形、サイズが分かる(クリックで拡大) 出典:Vayyarが公開しているYou Tubeの動画の一部をキャプチャーしたもの

応用分野は、さまざま

 乳がんの検査用に開発された3Dセンサー技術だが、物体を通過するというUWBの電波の特性を利用すれば、その応用範囲は広いとFamilier氏は語る。Vayyarは、同技術をイメージング(画像化)、モニタリング、センシングの3つの用途で展開する。

 イメージングでは、医療、建設、セキュリティなどの分野をターゲットとする。前述した乳がん検査の他、水道管やガス管の破損箇所の検査、空港や公共施設での保安検査などを想定している。

 Vayyarは、3Dセンサー技術の専用アプリを搭載したスマートフォンを板にかざし、板の裏側に取り付けたパイプを見る、という簡単なデモを披露した。

デモの様子。板を用意し、裏側にパイプを取り付ける(左)。デモ用のアプリを搭載したスマートフォンを板の前面にかざすと、裏側のパイプが画像化される(右) (クリックで拡大)
動画が取得できませんでした
上記のデモの様子

 モニタリングでは、高齢者の転倒を検知したり、人の呼吸をモニタリングしたり、ドローンなどに取りつけて衝突を防止したりといった用途が考えられる。Familier氏は、「高齢者の見守りで最も問題になるのが、プライバシーの保護だ。カメラを部屋に取り付けるくらいなら転倒した方がマシだと言う声も聞かれる。Vayyarの技術はカメラを一切使用しないので、プライバシーを侵害されることはない」と、メリットを述べる。また、煙や水蒸気、部屋の明るさといった環境的な要因にも影響を受けないので、カメラを取り付けた場合のように、レンズがくもって画像が見えなくなるといった弊害がなくなる。

 センシングでは、液体の組成を検出したり、土壌の水分を測定したりといった用途を想定する。Familier氏によると、Vayyarの技術を使うと牛乳の脂肪分、プロテイン、乳糖を検知できるという。

 なお、電波を飛ばせる距離は、電波法の規制によって変わるが屋内では最大5〜10m、屋外では最大50mだという。「距離に応じて、異なるアンテナとソフトウェアを提供する」(Familier氏)

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