“人の目を超える”、UWBを使った3Dセンサー:乳がん検査向けから開発が始まった(3/3 ページ)
イスラエルのVayyar Imagingが開発した「3Dセンサー技術」は、超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)無線周波数を利用して、対象物を画像化するものだ。乳がんの検査用に開発されたこの技術は、ガス管の検査からセキュリティチェック、高齢者の見守り、食品の組成検査まで幅広い分野に応用できる可能性がある。
手軽に3Dセンサー技術を利用できる開発キット
Vayyarは、メーカーズや中小企業向けとして、3Dセンサー技術を使ったアプリケーションを開発するための開発キット「Walabot(ワラボット)」を発売した。米国と欧州では、FCC(連邦通信委員会)とCEの認証を取得していて、既に出荷が始まっている。日本では電波法の認証を取得次第、発売される予定で、Familier氏は、数カ月以内には発売できると見込んでいる。
Walabotは、SoCとトランシーバーなどを搭載した開発ボードと、API(Application Programming Interface)やサンプルコードが含まるSDK(ソフトウェア開発キット)で構成される。開発ボードをPCやスマートフォンなどにUSB(USB 2.0および3.0)で接続すればアプリケーションの開発を始められる。SDKは、WindowsとLinuxに対応している。また、「Raspberry Pi」にも対応している。スマートフォンアプリは、現在はAndroidのみに対応している。
開発ボードには、最大24個までアンテナを搭載でき、アンテナの平均出力は−16dBm。アンテナの周波数は、米国向けは3.3GHz〜10.3GHz、欧州向けは6.3GHz〜8.3GHz、日本向けは7.4GHz〜10.0GHzとなっている。開発ボードの消費電力は25μWである。価格は149〜599米ドルで、アンテナの数やソフトウェアレイヤーの違いによって価格が異なる。
Familier氏は、Walabotを発売した背景について、「ここ何年かのメーカーズムーブメントもあり、“こういうシステムを開発したい”という要望や問い合わせが増えた。当社は人数が少ないので、それら全てに対応することは難しい。そこで、多くのメーカーズや起業家、中小企業に3Dセンサー技術を使ったシステムを簡単に開発してもらえるよう、Walabotを発表した」と語った。
なお、Familier氏は、同社の3Dセンサー技術を使った際に発生する電磁波の量について、「携帯電話で1回電話をかける時の1000分の1以下。限りなくゼロに近い」と述べている。
Vayyarは2011年に設立された企業で、現在の従業員は約30人。チェアマン兼CEO(最高経営責任者)のRaviv Melamed氏は、Intelでモバイルワイヤレスグループのゼネラルマネジャーを務めていた。CTO(最高技術責任者)のNaftali Chayat氏は、イスラエル国防軍のエリート技術部門でR&D(技術開発部)部の元チーフエンジニアという肩書を持ち、信号処理、無線通信に関して30年近い経験がある。同社はこれまでに2度の投資ラウンドで合計3400万米ドルの資金を集めた。
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